7月24日通りの評価
7月24日通りの感想
吉田修一らしい恋愛小説
地味な女性のリアルな恋愛この本を読んで一番に感じたのは、吉田修一は女性を描くのがうまいということだ。彼の作品で女性が主人公で尚且つその女性の一人称で語られる話は珍しくない。この小説も女性が主人公で、彼女の恋愛事情がメインに描かれている作品となっている。個人的には恋愛小説はあまり好きではない。どうしても話がそこにいきついてしまうのも安い感じがしてしまうし、それは自分自身が恋をしているときでさえそう感じていた。だけども吉田修一の恋愛小説はなぜか読んでしまう。恋愛小説と言うのは少し趣きが違うかもしれないが「愛に乱暴」も、主人公の女性の愛と苦悩が緻密な描写で描かれ、ストーリーから目が離せなかった。今回の「7月24日通り」はそこまで激しい愛憎ではないけれど、全体的に淡々としている一味違った恋愛小説である。ただ、主人公が好きかどうかはこれまた別の話で、私はあまりこの主人公の女性は好きではない。その...この感想を読む
吉田修一らしからぬ“アンパイ”な恋愛小説(本作にぴったりの一曲を添えてみた)
定番的に面白いけれど、“アンパイ”な恋愛小説“雨に濡れた窓ガラス越しの夕暮れ写真”という装丁、タイトルの『7月24日通り』、そして吉田修一と三拍子揃えば、ロマンティックな恋愛小説を想像してしまう。現実的で、ちょっぴり泣ける、そんな恋愛小説。だけど、アンパイだったなあというのが、読後の感想だった。可もなく、不可もなく。定番的に面白くはあるけれど、それ以上でもなく。長編小説にはめずらしい目次も、ポルトガルを散りばめた伏線も、手が込んでいるけれど、残念ながら、新鮮味に欠ける恋愛小説といった出来具合。吉田修一と言えば、読みやすく、微妙な線で理に落ちるストーリーを描き、人物を冷静に鋭く描写する点で、個人的に大好きな作家さんなのだけど、今回はよくできている、それだけと言った感じだった。手の込み具合がやり過ぎ!?本作品は、タイトルを始め、ポルトガルの地名がたくさん出てくる。何の情報もなく読み始めると、ポル...この感想を読む