吉田修一らしい文章が楽しめる中編集
大統領と閻魔ちゃん登場人物のこの二人のネーミングだけで、このストーリーを読む価値があると思う。この本の最初に収められている「最後の息子」は、愛すべきオカマちゃんと彼女と一緒に暮らしている男性の話だ。ストーリーの目線はこの男性で、彼の一人称で書かれている。当事者のはずなのになぜか客観的に感じるのは、カメラを通して描写されている場面が多いからかもしれない。「ゲイ狩り」と称して、無実の男性が公園で惨殺された。その彼こそが大統領というアダナだ。オカマの国を作る、大統領はアナタよと酔っ払った閻魔ちゃんに一方的に名づけられて以来のアダナなのだが、実にセンスがいい。閻魔ちゃんはもちろん、閻魔ちゃんの友達はマリネさんだ。いかにもな名前につい吹き出してしまった。このネーミングセンスのよさも吉田修一すごいなと思ったところだ。閻魔ちゃんと主人公の彼は、時折日常生活を戯れにビデオに撮っている。その中には大統領...この感想を読む
3.03.0
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