後味の悪さがたちが悪い作品
主人公の悪意と癖の悪さが際立つ3つの短編集この本にはタイトルにもなっている「熱帯魚」を含め、「グリンピース」「突風」の全部で3つの作品が収められている。それらに共通するのは、癖があり、何やら他人を見下しているような感じのある主人公だ。吉田修一の作品は、日常を切り取りそれを緻密に描写することで非日常に感じてしまうような秀逸さがありそれが魅力なのだけれど、今回の作品には確かに切り取られているのは日常ばかりなのだけど、そこに切り取られた日常には常に人を許さないような悪意が含まれているような感じがした。全体的に暗いし、だからどうなのそれ、といった感じも拭い去れない。しかしその感覚は決して悪いものではなく、気に入っている作家の作品でもそういうことはよくある。その上個人的には暗くて後味の悪いものは小説でも映画でも好みでもある。吉田修一の作品でも後味の悪いものはたくさんあるし、その中では好きなものも...この感想を読む
1.51.5
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