あんた、大切な人がおるね? その人の幸せな様子を思うだけで、自分まで嬉しくなってくるような人たい。
石橋佳男
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吉田修一は芥川賞を受賞した小説家だ。つまり、いわゆる純文学の作家であって、この小説「悪人」も、ジャンルとしてのミステリー小説ではないと思います。にもかかわらず、純文学と娯楽小説の境界を超えたところで、クライム小説として素晴らしい作品になっていると思います。作者の吉田修一自身にとっても、彼の最高傑作と呼ぶべき作品になっていると思います。事件は月並みな殺人事件である。福岡県と佐賀県の県境の峠で若い女性が殺される。この峠は、幽霊が出るという噂があるので、ホラー的な方向に進むかと思いきや、むしろ怪談じみた趣向によって、逆にこの殺人事件のありふれた安っぽさが強調されることになる。被害者の女は保険外交員で、出会い系サイトで複数の男とデートを重ね、売春まがいの行為も抵抗なく行なっていた。何という月並み、何という安っぽさだろう。だが、吉田修一はその月並みを見事に描き上げる。この絵に描いたような安っぽさ...この感想を読む
どこまでも切ない切ないヒューマンドラマ。祐一が、おとなしいのに金髪に染めてて、女性の扱いが上手くて、素朴で、そんな彼だから、人を殺してしまったということが、もうどうしようもない罪を犯してしまったということが、胸が千切れそうなくらいせつなくて。一人の人間を死なせるっていうのはすごく大きな重い重いことなんだな、と。いろんな人がいろんなものを背負ってる。それで最後に一緒に逃げるシーンがあって、最後の最後で光代まで自分から引き離すところが、苦しくて苦しくて。祐一の心情を思うともうどうしたらいいのか分からないくらいの感情に飲まれてしまう。で、タイトルの「悪人」に帰ってきて、本当の悪人って誰なのか、彼は本当に悪人なのか、という命題が浮き彫りに。すごくよくできた一冊だった。
「誰が悪なのか?」ボクにはすべての登場人物が悪に見えました。ある人にとっては「良い人」であっても、違う人にとっては「悪い人=悪人」と捉えられる。そう感じた作品です。ボクは映画を見た後に、この作品を読みました。実際に、映画では台詞が多く省略、加工されていた部分があり、これはかなり楽しめました。主人公が、出会い系サイトで本気で好きな人を探すダサさ、読みたい本も、聞きたい音楽もないという、孤独。想像しただけで、ボクはおかしくなりそうです。そこから想像する、誰にも注目されない寂しい人間像。しかし、自分の感情をつらぬき通そうとする激しい気性とプライド。いやー小説っていいものですね。おもろい!!!!!!!
石橋佳男
娘を殺された石橋が、事件を笑い話にしている若者に言った言葉