キャンセルされた街の案内の評価
キャンセルされた街の案内の感想
様々なシーンを切り取った10の短い物語
吉田修一の作品の魅力吉田修一の小説は、現代を生きる若者のリアリティとその生き生きとした描写や、時に見せる暗さと深く重いテーマ、後味の悪さなどが個人的に魅力を感じる。特に「東京湾景」の若者の感情の起伏の描写はともすればスタイリッシュになりがちなテーマが、リアリティあふれる話だったし、「さよなら渓谷」ではありえない関係のもたらすどこにも行き場のない二人が、暗いながらも切なく書かれていた。吉田修一の作品には長編にも短編にも魅力ある物語は多いけれど、時に前述したように時々スタイリッシュになってしまっているように感じる物語が時々ある。「日曜日たち」はそういう意味では残念な仕上がりだった。とはいえ時間を忘れるほどの感情移入をしてしまう作品もあるため、読んでいない作品があれば手にとってしまう。今回の作品もまだ読んでなかったということとタイトルに惹かれて読んだので、長編なのか短編なのかさえも知らなかっ...この感想を読む