若干の消化不良が残る恋愛小説
もっと詳しく読みたかった出会いの場面主人公“早川俊平”の一人称“俺”で描かれていくこの物語は、冒頭で聾の女性響子と出会う。そのまま2度目に偶然同じ公園で出会うのだけど、秋が深まってきた頃の公園はイチョウが落とした黄色の葉で歩道は埋められ、幼い少女が触ろうとする池の鯉、響子の白いマフラーなどの色の対比が鮮やかで、秋の澄んだ空気と相まってなんとも爽やかな印象だった。こういう風景の描写のうまさは吉田修一の魅力のひとつだと思う。そのような美しい描写での始まり方だったのだけど、なにかしら文章にひっかかって次に進めないところがあった。それは2度目に響子と会った俊平は、もう響子が聾であることをわかった上の自己紹介の仕方をしていたところだ。いつどこでそうと気づいたのかがはっきりせず初めて響子と出会った場面を読み返したりしたのだけど、響子の周りに音を感じなかったというような主観だけで、そうと気づいた印象...この感想を読む
2.02.0
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