本物には有無を言わせぬ説得力と強制力がある
田口公平
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『チーム・バチスタの栄光』は2006年に刊行された海藤尊の小説であり、第4回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した作品である。竹内結子、阿部寛といったキャストで2008年に東宝邦画系にて映画化され、興行収入約17億円の大ヒット作となり、2008年にはフジテレビ系でドラマ化された。 物語は架空の都市、桜宮市にある「東城大学医学部付属病院」を舞台とする。バチスタ手術と呼ばれる、一般に成功率は約6割という心臓病の難手術で成功率100%という驚異の成功を収めていたバチスタ専門の医療チームが、3例立て続けに謎の術中死に遭遇するところからストーリーは始まる。病院長より内部調査を依頼された不定愁訴外来の責任者・田口は確信の持てぬままこの件を「医療事故」と結論付けたが、外部からやってきた厚生労働省の役人・白鳥は田口の報告を一刀両断、「事件」として再調査に乗り出した。田口は破天荒な白鳥に翻弄されながらも徐々に真実に近付いていく。
今や広く名前の知れた小説家の1人である海堂尊氏のデビュー作。海堂尊氏はデビュー当初、自分はまだ小説家ではなく物書きです。と後書きで言っていたのを今でも覚えています。十冊以上書いてこそ、小説家と名乗れるとも書いていました。今や名実ともに小説家と堂々と名乗れるくらいの先生になったでしょう。とデビュー作から読んできた1人のファンとして嬉しいものです。デビュー作を振り返ってみますと、海堂尊氏の特徴として、とても読みやすい作品に仕上がっていると私は思っています。小難しい言い回しではなく、あくまで想像しやすい言葉を選んでいるのではないでしょうか。これも文学にどっぷり浸かった作家ではないからこそではと思っています。あとは登場人物のキャラが立ってると言いますか、とても印象深い人物が多く出ていますね。読んだのは数年前ですが、どんな人物がいたのか今でも鮮明に覚えております。恐らく、海堂尊氏の作品の特徴として...この感想を読む
ドラマや映画になった、白鳥&田口ミステリーの1作目上巻です。この巻では、まだ白鳥さんは出てこないのですが、その分、田口先生の魅力が満載です。『グチ外来』と陰口をたたかれる『不定愁訴外来』を担当する、窓際万年講師の田口医師が、病院長からいきなり、大学病院のエース、チーム・バチスタの手術中死の原因を調べるよう、依頼されることから物語が始まります。しかし、田口先生は、血を見るのが嫌で、卒業後ずっと外科分野から遠ざかってきたという外科音痴。しかも、陰謀などとは縁のない、のんびりが好きな性格。ただ、人の話を聞くのがものすごく上手で、自分でも気づかないうちに、違和感のある点を直観する能力もあって、ワトソン役にはぴったりなんです。小説では、ドラマや映画より田口先生の心の動きが鮮明にわかって、『こんなこと、考えていたんだ』などと、違ったおもしろさがあります。もちろん、大学病院の内情、手術室という密室、...この感想を読む
医師免許を持っている理屈屋で面倒で軽いノリの厚生省の役人・白鳥と、うだつの上がらない万年講師の主人公・田口が、病院内に起きた不可解な術死の謎に挑むというストーリーなのだが。術死が起きているのは、とあるチームの行う手術ばっかり。まぁ難易度の高いバチスタ手術を華麗な手技でこなし、驚異的な成功率を誇る名医・桐生の率いる「チーム・バチスタ」。果たしてこの術死は、医療過誤なのか?それとも殺人なのか?人は良いけど、全然冴えてない田口さんと、アグレッシブすぎる変人・白鳥さんという組み合わせはまあ、お約束といった印象(ワトソン君とホームズみたいな)。少々回りくどい文体でテンポを抑えつつ、でも小気味良く書かれている。自分は軽めの方が読みやすくて好みだが、重厚な話が好きな人には物足りないだろう。しかし軽い中にも「死因不明」を見逃すなという作者の思いが強く伺える作品だった。この作品を読むまで、死者にCTなんて...この感想を読む
田口公平
神経内科万年講師である田口公平は血を見るのが嫌いで手術から一番遠いところにいたが、病院長直命によりとある調査を任され、米国より招聘された心臓外科医の手術観察をすることになる。その心臓外科医の手術は出血が少なく美しい。素晴らしい技術を目の当たりにし、学生の頃に手術見学が退屈だったのは質の低い技術を無理矢理見せられていたからだと気づく。そしてまた手術を見たいと思っていることに驚き、上記の言葉がでた。