さよならドビュッシーのあらすじ・作品解説
さよならドビュッシーは、中山七里による音楽ミステリーで、ピアニスト岬洋介が登場するシリーズの第1作目である。2010年1月に宝島社より刊行された。 ピアニストを目指す16歳の遥が主人公。資産家の祖父と、仲良しの従姉妹とともに自宅で火事にあうが、ひとりだけ奇跡的に一命を取り留める。全身火傷を負い、指も思うように動かない遥に、音楽教師やクラスメイトたちも冷たい中、岬洋介がレッスン役を買って出ることに。しかし夢に向けて、コンクールに向けての練習の日々に、次々と不可解な出来事が遥の周りで起こり始める。ついには殺人事件まで起こり、衝撃のラストへ。 ドビュッシーの旋律に乗せた音楽青春小説でもあり、探偵役となっている岬洋介の推理が冴え渡る極上のミステリーでもあるこの作品は、第8回「このミステリーがすごい!」で、大賞を受賞している。 2013年には、橋本愛主演で映画化もされており、この時、岬洋介役には現役のクラシックピアニスト、清塚信也が抜擢されている。
さよならドビュッシーの評価
さよならドビュッシーの感想
物語構成、キャラクター、音楽の見事な融合
ミステリーの常套手段信用できない語り手(英語: Unreliable narrator)とは、誰かの独白や手記など一人称で語られる物語の手法を指します。代表的なところではアガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』。日本の作家であれば湊かなえの『母性』、降田天の『女王はかえらない』など、ミステリーファンであればいくつか思い当たるものがあるのではないでしょうか。本作『さよならドビュッシー』もこの手法に則って書かれたもので、最終的に語り手が入れ替わっていたというのが衝撃のラストに繋がってゆきます。では、信用できない語り手にはいくつか典型例がありますので、その内容から詳しく見ていきたいと思います。1.子供の語り手前述の『女王はかえらない』がこれにあたりますが、子供であるがゆえに経験や判断が正常にできておらず、結果的に読者を騙してしまうというパターンです。子供ならではの思い込み、子供だけの常識により、時として大人には理解...この感想を読む
ミステリーであるべきでなかった。
このミス大賞受賞と言う事で手に取った作品で映画化もされていました。中山七里氏のデビュー作とのことです。内容は…まだ発展途上なのでしょうか、名作は過去の作品の模倣から始まると言いますが、本作は既存のトリックを少しずつ貼り付けてつくったような印象。タイトルがドビュッシーとのことで曲や音楽が鍵になるのか?なんて思って読んでみたらまったくそんな事は無く、がっかり。動機やトリックも納得いかないものがほとんどでありましたし、この感じは最後にどんでんがえしが…?と思って最後まで読んでみると、伏線の提示をされてもまったく納得がいかないもので。最近の持ち上げられている新人のミステリはこういった傾向が強く少し残念です。音楽の描写やそれに向きあっていく人々の描写はよかったと思う。ミステリをそこに無理やりねじこんでほしくなかったものである。
映画にもなった切ないミステリー
映画化もされ、人気を博したミステリーです。美しい表紙で、一見すると明るい話かと思いきや、なかなかに暗いもので、びっくりしました。なんとなく主人公の性格に入れ込むことができずに、終始恐る恐る読んでいたという印象です。私個人としては、そのようなドキドキ感はあまり好みではありませんでしたが、好きな人はハマる、そんな雰囲気が流れていると感じました。結末はなんとなくは予想していましたが、それでも驚かされました。サブテーマとしての音楽の使い方も、音楽素人の自分としては、こういう世界もあるのだな、と興味深かったです。びっくりしたい人、切なく悲しいミステリーが好きな人にはおすすめです。物語の余韻がいつまでも続いて、衝撃を与えてくれると思います。