ジェネラル・ルージュの凱旋のあらすじ・作品解説
ジェネラル・ルージュの凱旋は、2007年に海堂尊が書いた医療ミステリー小説で宝島社から出版された。海堂尊は作家だけでなく医師でもあり、その知識を活かした作品である。デビュー作の「チーム・バチスタの栄光」は第4回このミステリーがすごい!大賞を受賞した。 田口・白鳥シリーズの第3作目で、物語は匿名の内部告発文書が主人公、田口のもとへ届いたことから始まる。救急救命センターの部長にかけられた収賄疑惑の謎の解明を厚労省の白鳥と共に解決していく内容である。医療問題、大災害パニックも含まれている。この作品は、前作のナイチンゲールの沈黙と同時進行で進んでいくのが特徴である。 2009年には同名の映画が公開され、小説では主人公の田口は男性であるが、映画では女性の竹内結子が演じており、小説にはない殺人の要素も加えられている。 また、2010年にはチーム・バチスタ2としてドラマ化もされ、主人公の田口は伊藤淳史が演じている。
ジェネラル・ルージュの凱旋の評価
ジェネラル・ルージュの凱旋の感想
華やかキャラ登場
「ナイチンゲール」とほぼ同時期、東城大学医学部付属病院に匿名で文書が届く。文書は告げる。「救命救急センター部長が特定業者と癒着している」と。院長の依頼でまたも田口が調査に乗り出した。緊迫感に引き込まれると同時に、ジェネラルこと速水の人物像、田口が他者からの高い評価を持て余す姿。舞台とキャラクターの魅力にページをめくる手が止まらなくなる。今作は事件による犠牲者もなく、匿名の告発以外にミステリー要素はほとんどない。しかし、救命医療現場のギリギリの状況(システムは既に限界にきており、医療スタッフの実力と努力でなんとか動かせているだけだと思わざるをえない)、そこが自分達の命を支える最後の砦なのだという危うい現実が克明に描かれていて、読後もいろいろと考えさせられる。
若き救急救命医のたたかい
「チームバチスタ」シリーズの第3弾。前作は小児科病棟が舞台ではあったが、救急救命病棟へ移る。但し、時間軸的には『ナイチンゲールの沈黙』と同時刻の出来事でもあるので、そちらも一読していただくことをお勧めする。主人公の田口は相変わらず病院長より厄介ごとを任せられるわけだが、今作は前2作までよりもミステリー性は薄く、むしろ主眼は一刻を争う現場の緊迫感や、院内政治などの権力闘争にあるのかもしれない。そこで登場するのが、救命部長の速水である。彼のわが道をゆく奔放な性格と、同時に凄腕の救命医という破天荒なキャラクター描写が上手い。ストーリー展開上、殺人事件は前作で展開されているため謎解きを期待していると肩透かしを食らうかもしれない。しかしながら、今作でもキャラ立ちしたおなじみの面々が病院内も、展開も引っ掻き回してくれるのでけっして読者を飽きさせないのは流石である。