チーム・バチスタの栄光の感想一覧
海堂 尊による小説「チーム・バチスタの栄光」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
海堂尊氏デビュー作
今や広く名前の知れた小説家の1人である海堂尊氏のデビュー作。海堂尊氏はデビュー当初、自分はまだ小説家ではなく物書きです。と後書きで言っていたのを今でも覚えています。十冊以上書いてこそ、小説家と名乗れるとも書いていました。今や名実ともに小説家と堂々と名乗れるくらいの先生になったでしょう。とデビュー作から読んできた1人のファンとして嬉しいものです。デビュー作を振り返ってみますと、海堂尊氏の特徴として、とても読みやすい作品に仕上がっていると私は思っています。小難しい言い回しではなく、あくまで想像しやすい言葉を選んでいるのではないでしょうか。これも文学にどっぷり浸かった作家ではないからこそではと思っています。あとは登場人物のキャラが立ってると言いますか、とても印象深い人物が多く出ていますね。読んだのは数年前ですが、どんな人物がいたのか今でも鮮明に覚えております。恐らく、海堂尊氏の作品の特徴として...この感想を読む
田口先生、最高です!!
ドラマや映画になった、白鳥&田口ミステリーの1作目上巻です。この巻では、まだ白鳥さんは出てこないのですが、その分、田口先生の魅力が満載です。『グチ外来』と陰口をたたかれる『不定愁訴外来』を担当する、窓際万年講師の田口医師が、病院長からいきなり、大学病院のエース、チーム・バチスタの手術中死の原因を調べるよう、依頼されることから物語が始まります。しかし、田口先生は、血を見るのが嫌で、卒業後ずっと外科分野から遠ざかってきたという外科音痴。しかも、陰謀などとは縁のない、のんびりが好きな性格。ただ、人の話を聞くのがものすごく上手で、自分でも気づかないうちに、違和感のある点を直観する能力もあって、ワトソン役にはぴったりなんです。小説では、ドラマや映画より田口先生の心の動きが鮮明にわかって、『こんなこと、考えていたんだ』などと、違ったおもしろさがあります。もちろん、大学病院の内情、手術室という密室、...この感想を読む
ページがどんどん進む
医師免許を持っている理屈屋で面倒で軽いノリの厚生省の役人・白鳥と、うだつの上がらない万年講師の主人公・田口が、病院内に起きた不可解な術死の謎に挑むというストーリーなのだが。術死が起きているのは、とあるチームの行う手術ばっかり。まぁ難易度の高いバチスタ手術を華麗な手技でこなし、驚異的な成功率を誇る名医・桐生の率いる「チーム・バチスタ」。果たしてこの術死は、医療過誤なのか?それとも殺人なのか?人は良いけど、全然冴えてない田口さんと、アグレッシブすぎる変人・白鳥さんという組み合わせはまあ、お約束といった印象(ワトソン君とホームズみたいな)。少々回りくどい文体でテンポを抑えつつ、でも小気味良く書かれている。自分は軽めの方が読みやすくて好みだが、重厚な話が好きな人には物足りないだろう。しかし軽い中にも「死因不明」を見逃すなという作者の思いが強く伺える作品だった。この作品を読むまで、死者にCTなんて...この感想を読む
「チーム・バチスタ」シリーズの始まり
映画やテレビドラマ化され話題となった、「チーム・バチスタ」シリーズの原作小説第1弾。「このミステリーがすごい!」大賞の受賞時、作者が現役の医師(病理医)であったことから描かれるリアリティ。にもかかわらず個性的で強烈なキャラたちによって、時には読者が噴き出してしまうような笑える要素。そして殺人事件発生と謎解きによるミステリー。本作品では挙げればキリがないというほど、語る要素盛りだくさんである。その中でも特筆すべきは、やはり作中最大の問題人物、厚生労働省の官僚・白鳥であろう。彼は主人公の医師・田口が事件に巻き込まれ袋小路に陥ったところで颯爽と登場する。良く言えば核心をつく言動が光り、悪く言えば空気を読まず場が紛糾する。しかも厚労省の肩書をいわば「葵の御紋」として利用するのだからタチが悪い。しかしそれがまた痛快なところも本作の醍醐味。厄介事を断れない性格の田口とは、奇妙だが最高のコンビとなる。...この感想を読む