私は一人が怖い。誰かと生きていきたい。必要とされたいし、必要としたい。
芦沢理帆子
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初めて読んだ辻村深月辻村深月を知ったのは「時の罠」というアンソロジーで、そこに書かれたタイムカプセルの話が面白かったので、他の作品も読んでみようと思ってこの「凍りのくじら」を手に取った。タイトルにも心を惹かれたし、何より始まり方がだんだんと死にいくクジラの描写だったので、この先の暗さと重々しさを予感させ、期待して読んでいった。しかし気を惹かれたのはこの部分だけで、冒頭部分、主人公の芹沢理帆子のインタビュー部分はなぜか文章がまったく頭に入ってこなかった。文章が悪いというわけではないのだろうけど、なぜかまったく文章が頭で映像化されないのだ。結果、同じところを何度も読み、嫌になって次目を惹く文章まで読み飛ばすということになってしまった。インタビューの後は理帆子の高校生活の話になる。そこあたりからはまあまあ読むことができたので少しほっとした。キーワード「ドラえもん」この作品のキーワードは「ドラ...この感想を読む
藤子・F・不二雄先生の描くドラえもんワールドとのリンクと言うことで手にとったこの作品。これはある少女の成長期である。いやこの物語からすると育て上げられた、といった表現が正しいのか。主人公は悪く言えば、特に何もしていない導かれているのだ。それと少し、「幼さ」というものを感じた。それは作者も含めて、だが。もちろん幼稚という意味ではない発展途上と言う意味での幼さである。まず主人公は高校生で…高校生らしいといえばそうなのかもしれないが…この物語は主人公に対してどのような目線で見るかで大きくかわるかと思われます。客観的なのか、主観的なのか。もし後者であるならばラストは心動かされるものになるでしょう。そのようなレトリックが多く含まれているから。もし前者であってしまうなら…途中で本を閉じてしまう人もいるかもしれない。けして私はこの物語を批判しているわけではない、むしろ私は好きである。もちろんそのとこ...この感想を読む
ドラえもんが好きだし、ドラえもんを題材にしているということで有名だったから、どんなもんだろうと思って手に取ってみた一冊。ドラえもんにくわしい人でもくわしくない人でも特に変わりなく読める作品だったと思う。辻村深月さんは、人の闇を描くのが得意な方だな、と思っているのだが、この本でもそういう雰囲気があり。繰り返し出て来たのは、「人は脈絡なく動く」「矛盾だらけの思考で動く」という点。最初に出て来た時は、確かに、と甚く共感したが、あまり何度も出て来たのでちょっとやり過ぎな感。そういう人間の心理について、リアルというか、現実感を伴った描写が続くのに、ラストはいきなりのSF展開で戸惑った。ご都合主義的な雰囲気が否めない。
芦沢理帆子
自分が周りの人たちに執着できないということを認め、初めて人に執着しようといている場面。