名前探しの放課後のあらすじ・作品解説
名前探しの放課後は、辻村深月の小説である。 富士見高校に通う高校1年生の依田いつか。依田が最初に感じた違和感は、撤去されたはずの看板が有ることだ…依田は、自分が過去に戻されてしまったのではないかと動揺する。依田の予想通り、3ヶ月前の世界に戻されてしまっていた。そんな中思い出した一つの記憶…高校のクラスメートの坂崎あすなに、同級生が自殺するが、誰なのか思い出せないと相談をした。そして、どうにか元の世界で自殺してしまった生徒を救いたいと、坂崎あすなと共に誰かを探しはじめる…。 講談社ノベルズから刊行されており、2008年第29回吉川英治文学新人賞候補に選ばれた。 辻村深月は1980年2月29日生まれの山梨県笛吹市出身、ミステリ・推理小説のジャンルで活躍。2004年「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞し作家としてデビューした。2011年「ツナグ」にて第32回吉川英治文学新人賞を受賞した。
名前探しの放課後の評価
名前探しの放課後の感想
高校生たちの青春群像劇
反則で負けたような気分うん、辻村深月はすごい作家だと思う。この作品が素晴らしいというわけではなくて、きっと書くことを楽しんでいるのだろう。私は辻村深月のファンというわけではないのだが、強くすすめてくれる人があって、何冊か読んでみた。読む順序があったりして難しいらしい。コレの次はコレなんだよとまで指示される。と、いうわけで順序を守った上でのこの『名前探しの放課後』なのである。私は本を読む時は、減点方式。それって楽しいの?とよく聞かれるのだが、性分なので仕方がない。特にミステリーを読む時は伏線を見逃さないように、気を配っている。作家との勝負を受けて立っているようなつもりで読む。だから、この物語を読み始めて「同じ学校の子が自殺するのだけど、それが誰だかわからない」という書き手に都合の良さそうな、謎を投げかけられた時に「その同級生は依田いつか」本人ではないかと予想していた。散々大騒ぎして「え?...この感想を読む
心理描写の妙
思わずうなってしまうような心理描写(もちろん良い意味で)。登場人物ひとりひとりの性格・感情・心の動きがとても丁寧につづられていて面白いし興味深い。イマドキの高校生はこう、というのが少々過剰に表現されているような気もしないでもないけれど、学校の中でこういうタイプやああいうタイプの人たちいたなーと思いだされるような。主人公が、あまり……誠実な感じではなく、女性関係が良くないし、人の気持ちがよく分からなかったり、自分の思い通りに物事がいかないといらだったり。でもそこがいい。タイトルにある名前探しのゆくえも気になるし、主人公がこれからどんなふうに変化していくのか、あるいは変化しないのかがとても楽しみ。