フライ,ダディ,フライの評価
フライ,ダディ,フライの感想
暴力ではなく”力”
暴力がいかにして生まれるかこの作品に限らず金城一紀の作品を読んでいると、暴力とは何たるか、ということをしばしば考えさせられる。世の中から暴力をなくそうという基本的な理念は世界中の誰しもにも理解してもらえるはずだ(少なくとも表面上は)。しかし現実問題暴力は世の中を支配している。それはただの筋力や武力なんかだけではなく、権力や社会力による他人の制圧もそうであると思う。そしてもっと言えば暴力のない世界の実現という考え方でさえも、他人に強要してしまえばそれはすでに暴力の始まりなのだ。なぜこのように暴力は世の中を支配しているのか。この作品の場合で言えば物語の始まるきっかけが暴力である。サラリーマン鈴木の娘が高校生ボクサー石原に襲われてしまうのだ。普通の女子高校生とボクサーである男子高校生という圧倒的に力に差のある相手に無抵抗に攻撃される。そこでその悔しさを暴力で相手にぶつけようと今度は鈴木が刃物...この感想を読む
はげまされる。
がんばれおっさん!!と応援したくなるような作品です。娘に暴力をふるわれ、その娘にかける言葉も見つからず暴力をふるった男に反撃することもかなわず。そんな情けない四十代のおっさんが、ひょんな間違いから不良の高校生とであいます。そのなかでも在日で喧嘩に強い男子に師事し、体を鍛え上げてもらいます。最初は死にそうになったり諦めかけたりするもののどんどん強くなっていく姿がかっこいいです。孤独な在日少年との心の交流もみどころだと思います。在日少年がでてくるっていうところが金城作品の特徴なのかも。落ち込んだときややる気をだしたいときによみたい。