重力ピエロのあらすじ・作品解説
『重力ピエロ』は2003年に新潮社より刊行されたミステリー作家伊坂幸太郎の小説で、第129回直木賞の候補作となった作品である。2009年に加瀬亮、岡田将生といったキャストで映画化され、第33回日本アカデミー賞を受賞した。今では人気作家となった伊坂幸太郎の名を世に知らしめた作品である。 大学院で遺伝子の研究をする兄・泉水と、街中のグラフィティアートを消すアルバイトをしている弟・春の兄弟は辛い過去を抱えながらもそれぞれの生活を送っていた。そんな中、弟の春は仙台市内で起きている連続放火事件に奇妙な一定のルールがあることに気付き、兄の泉水もそのことに興味を持ち2人は事件の謎解きを始める。徐々に真相に近付いていく中で放火事件とこの家族の過去とが不思議とリンクし、24年前から今へと繋がる家族の謎が明らかになっていく。最後には同時進行的に各所で起こっていた出来事が一つのストーリーへと繋がり、思いもよらなかった結末へと導かれる。
重力ピエロの評価
重力ピエロの感想
ヘビーな伊坂小説。
まず物語の設定が重い。「私」の弟である「春」は母親が強姦されたときに身ごもったときの子供であり…そのほかにも物語に出てくる一人ひとりに逃れられない悩みがあり…といった調子で中盤に入るまでは物語が進みます。しかしこれが伊坂氏らしさというのかその設定の割りにその話ほど重くは感じないのだ。あくまで割りに、だが。理由として伊坂節とも言うのか軽やかというのかキザといいうのか、そういった台詞回しや場面展開によるものかと思います。しかしこれはミステリーではありません、かといって家族愛というには感情移入しにくい設定のうえキャラ作りである。強いて言うならばこの物語にある様々な犯罪の起こりうる世の中に対するアンチテーゼを解いていくためのものなのだろうか。もしそうなのだとするならば、そのようなテーマをこのような軽やかなテンポで美しく書かれている小説としては良い評価をされてもいいと思います。もしかしたらそうい...この感想を読む
重々しいが面白い
兄と弟、父と母。一見普通の家族だが弟は母が暴行されてできた子であり、彼らは辛い闇を抱えていた。大人になった兄弟が主人公。兄弟の周りで起こる連続放火事件・壁の落書き(グラフティアートというらしい)・遺伝子配列、これらが繋がっていくにつれて真相が明らかになる。終始、重いものが離れない。訳ありで産まれた弟が普通であるようで普通でない。その描写が絶妙でリアルで上手い。事件の割にはゆったりした空気が流れている雰囲気だが、根底にあるドロドロ感が時々顔を見せる。犯人は初期段階で分かってしまったが、謎解きの過程は純粋に面白い。最後の父と兄弟が話す場面が温かく、物語の重々しさを少しだけ軽くしている。
重い
話題だったので、映画を先に見ました。一言で感想を言うと、「重い...]です。ボクにとっては内容が好きではなく、映画と小説を見終わった後に心が重かったです。しかし、映画で心が重くなったのに、なぜ小説まで読んだのか。それは「やみつきになる」重さだったからです。話題になるだけあります!家族の絆も多々書かれていましたが、殺人を美化しちゃダメかなーと、面白いを抜きにして思います。それでも、考えさせられるセリフや、心にグッとくるセリフが多いことはプラスポイントです。特にお父さんのキャラクターがいい味を出していました。ただ、重い。それだけです。