路(ルウ)の評価
路(ルウ)の感想
日本の新幹線が台湾を走るという壮大な夢の実現
吉田修一のイメージとは少し違った作品吉田修一の作品は「東京湾景」や「7月24日通り」のような現代若者の恋愛や生活、心理などが生き生きと描かれる作品、「悪人」「怒り」のようなサスペンス、スパイものの「太陽は動かない」などジャンルは様々あるけれど、この「路」はそのどれにも属さない新たなジャンルのように思われる。個人的には吉田修一の作品の中で、好きな作品のひとつだ。この作品を書き上げるのに多くの取材の時間を費やしたように感じられる。今の台湾の町並みや風景はもちろん、新幹線が走る前の風景などの描写は目の前にその光景が広がるようだ。吉田修一の作品の特徴の一つに、風景の描写のうまさがあると思う。もっと言えば、人物の心理描写よりもそちらのほうがうまいと思う。今回も流れていく風景のひとつひとつ、台湾の町並み、屋台のにぎやかな様子が丁寧に書かれており、自分が本当に車窓から見ているような、スクーターから見...この感想を読む
最終章まではあんまり・・・
正直最終章までは、物語が平坦すぎるような気がしました。物語に登場してくる方々の中でも核になってくるのは春香かなって思うのだけど、周りの人々が、苦労に苦労を重ねて開通にこぎつけたというようなストーリーになるんだと思っていました。確かにそのような感じのくだりはあるものの、非常に淡々としたあっさり系の展開であるのには変わりありません。しかし淡々だった流れは最終章で急に様変わりします。特に病院長が日本の旧友に言った『台湾で死ね』という言葉は、忘れられません。読む人によって本に求める価値観や好みは様々でしょうが、私はその『台湾で死ね』という一言だけで、この本を読んだ意義があったと思っています。