みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。
榊杏奈
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小説レビュー数 3,320件
「夜のピクニック」この本と出会ったのは、高校生の時である。貴子と融と同じ高校3年生の時。読解問題でこの本の存在を知った。作者の名前に見覚えがあり、ちゃんと読みたいと思った。高校生の時に自分でアルバイトをして稼いだお金で買った本だから、すごく愛着がある。表紙も気に入った。厚めの文庫本だったので、ゆっくり時間をかけて読んでいこうと決めていた。背表紙にかかれている「永遠の青春小説」というフレーズ。ここが一番のお気に入りである。読んでいる合間、読み終わった後に感じていたことは、「夜のピクニック」を高校生のあの時に出会い読めたこと、高校の10分の休み時間に、窓際の一番前の席、カーテン越しの日向が心地よいあの席で読めたことが何よりも嬉しかったのである。「青春」ってなんだろう。背表紙の「永遠の青春小説」このフレーズは、目にするたびに私をドキドキさせる。中学から、高校に進学するとき、少女漫画まではいか...この感想を読む
恩田陸という作家が世に広く知られた作品ではないでしょうか。紀伊国屋書店の店員がえらぶ「キノベス」、そして第一回「本屋大賞」を受賞した、まさに本好きに選ばれし小説です。著者が高校時代に実際に経験した、約2日間歩き続けるという学校行事を舞台にした物語です。はじめてこの小説を読んだのは高校3年生の卒業間近で、「あぁこんな行事があったら!!」と思ったことを覚えています。ある登場人物が、「みんなで歩くだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう」と話す場面がありますが、まさにその通りで高校時代にしか味わえない一瞬を切り取った青春小説だと思います。新潮社から出ている恩田陸さんの小説で高校生を主人公にしたものは、他に「六番目の小夜子」「球形の季節」があり、「夜のピクニック」と合わせて青春三部作と言われています。前の2作品がホラー・ファンタジー要素を秘めている一方、夜のピクニックにはそのような場面は一切...この感想を読む
高3の最後のイベント「歩行祭」。80キロの距離をえんえんと歩くのは辛いけれども、なんだかワクワクしてしまいます。気の合う友達と語り合いながらゴールを目指すという時間はキラキラして素敵。これぞ青春!!って感じです。主人公の貴子と融の異母兄妹という複雑関係の2人。歩行祭で友人たちの強烈なフォローのおかげもあって、長い間のわだかまりが溶け、お互い向き合っていくのが、なんとも爽やか。高校時代、私にはこのような素敵なイベントはありませんでしたが、読んでいるとなんだか一緒に歩いて参加している気分でした。そして、高校時代のことが思い出され、なんとも言えない懐かしい気持ちに包まれました。
榊杏奈
主人公・貴子の親友・杏奈はアメリカ育ちの帰国子女。彼女が初めて日本の学校の行事「歩行祭」に参加し、感動して言った言葉です。この言葉が小説全体を通して繰り返され、この行事が生徒たちにとってどれほど大切なものか強調しています。単純なことの中にこそ、輝く価値があると思わせてくれる言葉です。