悪人の評価
悪人についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が5件掲載中です。
各項目の評価分布
悪人の感想
今、私たちが生きる日本のリアルを浮き彫りにし、単純な事実の中に複雑な人間の真実を見すえた 「悪人」
吉田修一は芥川賞を受賞した小説家だ。つまり、いわゆる純文学の作家であって、この小説「悪人」も、ジャンルとしてのミステリー小説ではないと思います。にもかかわらず、純文学と娯楽小説の境界を超えたところで、クライム小説として素晴らしい作品になっていると思います。作者の吉田修一自身にとっても、彼の最高傑作と呼ぶべき作品になっていると思います。事件は月並みな殺人事件である。福岡県と佐賀県の県境の峠で若い女性が殺される。この峠は、幽霊が出るという噂があるので、ホラー的な方向に進むかと思いきや、むしろ怪談じみた趣向によって、逆にこの殺人事件のありふれた安っぽさが強調されることになる。被害者の女は保険外交員で、出会い系サイトで複数の男とデートを重ね、売春まがいの行為も抵抗なく行なっていた。何という月並み、何という安っぽさだろう。だが、吉田修一はその月並みを見事に描き上げる。この絵に描いたような安っぽさ...この感想を読む