「嫌だ」という人間の、その訴えを無視出来るくらいの理性であるならば、初めからないほうがいい
ラムセス二世
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きりこについては、西加奈子が2009年に角川書店から刊行した作品である。 きりこは、小学校の体育館裏で黒猫を見つけ名前を「ラムセス2世」と名づけた。ラムセス2世は成長するにつれて人の言葉を覚えていった。きりこ自身、両親の愛情をたっぷりと受けて育ってきたのだが、小学5年生の頃に好きになった男の子に「ぶす」と言われてしまいショックを受ける。やがてきりこは引きこもる日々を送ってしまうが、ラムセス2世に励まされ、外に出る決意をする…。 西加奈子はイラン・テヘランにて1977年5月7日に生まれた。エジプト・大阪府和泉市育ちである。「ぴあ」のライター後、2004年「あおい」でデビューし2005年に発売した「さくら」が20万部超えのベストセラーとなった。2007年「通天閣」で織田作之助賞大賞受賞、2011年さくやこの花賞受賞など数々の賞を受賞している。 2012年には「きいろいゾウ」が宮崎あおい、向井理にて映画化された。
容姿という残酷本作にはブスという言葉が数百回出てくる。醜い、とか、ばけもの、という言葉すらある。それも人間の女の子、しかもヒロインであるきりこを表すために、この言葉が使われる。容赦無い小説である。かなり勇気がいる表現だと思う。今の世の中は、このような言葉が使われない方向に動いている。テレビやラジオでは放送禁止用語として厳重注意の箱に入れて扱うし、一般社会でも直接的にこのような言葉を使う人はデリカシーが無い人と思われてしまう。では、このような偏見が無くなったのか?そうではない。それらは単に表に出なくなっただけだ。依然として人は容姿で他人を判断する。顔かたち、スタイルなどのその人の責任下にないもので差別したり、衣服や装飾品を見てその人の社会的位置づけを確認する。容姿が美しく、服装に気を配って身ぎれいにしている人は、安心だと判断して近寄る。それが異性であれば愛の対象の上位にランク付けする。学...この感想を読む
簡単に言うとぶすな女の子の半生の物語だけど…題名だけ見て「なんの話だろう?」と想像もできないまま読み進めると、いきなり「きりこ」がどんなにぶすかという細かな描写が始まります。そこまで言っていいの?と気が引けるほどに。そして色んな登場人物とともに、きりこの成長が描かれていくのですが、一体このぶすな女の子はどうなっていくんだろう?と気になって、ページをめくる手が止まりませんでした。そのうち、きりこの成長だけでなく、関わった人達の人生もきちんと紹介されます。あの人どうなったんだろう?という消化不良が起きないのはおもしろい作り方だなぁと思いました。口語が混ざったような、客観と主観がまざったような書き方もおもしろくて、読みやすい文章でした。先が読めない設定と、よめたと思ったら先回りされるストーリー展開きりこの設定はすごすぎて共感は難しいのですが、他の登場人物は「わかるわかる」というキャラばかりで...この感想を読む
「きりこは、ぶすである。」(ぶす、が太字で強調してある!)で始まる小説です。女の子と、その飼い猫(ラムセス2世)の話なので、ほんわかしたファンタジーを想像すると、あまりの「ぶす」の言葉の多さに驚いてしまいます。いかにぶすか、どうぶすか…書いてあるけど、どうやら想像を絶するぶすらしい、と解るのに、時間はあまりかかりません。「人は、容れ物ばかりに目がいきがちだけど、中身も大事」という事を、きりこが解るまでを書いてあります。ラムセス2世が、話に入る事により、内容の重さが中和されているような気がします。中身は、ぐいぐい引き込まれる、面白さで、★を5つ、と行きたいのですが、後半の急いでいる所の展開が、あまりにも綺麗にまとまり過ぎて、この話を、ファンタジー小説にし過ぎている気がして。ごめんなさい、★を0.5だけ減らしました。もう少し現実性が欲しかったなあ。読後感は、綺麗にまとまっているだけあって、...この感想を読む
ラムセス二世
登場人物の一人である、井出ちせが出会い系サイトで知り合った男とセックスしようとした際、急にやる気が失せ、「嫌だ」というが男はそのまま挿入し、結果的にレイプされることとなった。そのことを聞いた猫であるラムセス二世の感想。