漁港の肉子ちゃんの評価
漁港の肉子ちゃんの感想
肉子ちゃんは世界中に。混沌とした世界を照らす希望の物語
「肉子て!」タイトルからすでに先制パンチ、西加奈子の凄さこの小説の著者は言わずと知れたベストセラー作家だが、著者の数ある作品の中でもタイトルのインパクトは本作がピカ一だろう。漁港なのに魚じゃなくて肉!?たぶん太った女の人が主人公なんだろうけど、あだ名だよな。あだ名じゃなかったらやだな…などと、読む前から想像力をガンガン働かせてしまう。タイトルからもうやられた感満載である。そして読み始めてやっぱり、やられた…である。もう話にどんどん引き込まれてしまう。肉子ちゃんのその枠外のキャラクター。明るいふとっちょのブスで、常に大阪弁で変な語呂合わせが好きで、そして、何よりも情に厚く涙もろい。このキャラクターにやられて、読んでいる間に何度鼻の奥がツンとしたことか…。シビアな世界と肉子ちゃんという浄化装置このすごいキャラが暴走するだけではなんだか疲れてしまう話になりそうだが、そこをクールダウンさせてく...この感想を読む
「自分らしく生きる」勇気をくれる小説
ありのままVS自意識の塊の母娘かしこくかわいい小学5年生の娘・キクりんと、まん丸に太っていて明るい38歳母・肉子ちゃん。正反対の母と娘。二人の会話や関係から見えてくるのは、「ありのままVS自意識」という、私たちにとっての理想と現実が、物語を通して表現されていると感じました。誰しも、肉子ちゃんのように自分らしく生きたい」と思ったことがあるのではないでしょうか。肉子ちゃんはたくさんの過去があって、不細工で、ちょっぴりおバカだけど、底抜けに明るくて太陽みたいな人。肉子ちゃんのように生きることができたら、きっと楽しいですよね。一方、キクりんは賢くて可愛いけれど、友人との会話や肉子ちゃんとの関係で、どこか息苦しさを感じている。現実ではキクりんのように、自意識でがんじがらめになって、息苦しくなることもありますよね。ちゃんとしなきゃ、迷惑をかけないようにしなきゃと、自分で自分を苦しめしまう悪循環。キクり...この感想を読む
肉子ちゃんになりたい
肉子ちゃんに圧倒されます。母親である肉子ちゃんのキャラというのはなんだろか、豪快でいて、純粋、そして懐が深い。ガハハハ!と大口を開けて腹の底から笑い、ちょっと空気の読めないような冗談や、笑ってはいけない場面でも笑ってしまうような不謹慎さを持ち合わせているにも関わらず、あー肉子ちゃんなら仕方ないね、て思わせてしまうような存在です。近くにこんな人いる気がする、なんとなく知ってる気がする、とも思わせるんですが、実際はいないような。肉子ちゃんのように本当にわかりやすく、自身をさらけ出しても愛される人っていうのはなかなかいないと思います。肉子ちゃん自身は愛されている実感などあまりないのかも知れませんが。自身の周りの人間を全て善人としか考えておらず、受け入れる強さ、温かさ、そしてそれに甘えた人間に例え酷い仕打ちを受けたとしても、またガハハハと笑って許し、前に進む。そんな肉子ちゃんのそばにずっといる...この感想を読む