うつくしい人の評価
うつくしい人の感想
うつくしい人ってどんな人?
西加奈子の得意路線西加奈子の小説には常に精神的問題を抱える人が登場する。自分自身に対するコンプレックスや、精神疾患とも思える痛い傷を背負っている場合もある。それを認めつつも、ダメな自分でもいいと思って生きていくというパターンと、ダメな自分を肯定も否定もできないまま、何一つ変わらない今を生きていく、というパターンに分けられると思う。勝手ながら、私は読み手に希望を与える前者の作風を白加奈子、闇のみを提示して敢えて希望に走らないパターンを黒加奈子と呼んでいる。 本作は白加奈子の代表的一作だ。主人公蒔田百合は上手く生きれない自分を棚に上げて、姉や旅先で出会う人たちを見下し続ける。しかし、色々な体験と出会いで周囲の人々が、立派ではなくても悪くはないことに気付き、その延長で少し自分も肯定できるようになる。主要な登場人物は全て問題を抱えており、一見ダメな人ばかりだ。それぞれのキャラを考察することで本...この感想を読む
人生の指針、のひとつ
本を読む意味私にとって本というものは、自分が言葉にして整理できない感情を代弁してくれる存在です。読書は、ごちゃごちゃした部屋を片っ端からさらにひっくり返してある物をすべて出し、そして一から片付けなおす作業に似ています。物語が進むと、だいぶ片付いてきたな、と安心した途端、やっぱりここに片付けると厄介だな、とか、これは捨てずにまだ持って居よう、とか、整理をつけているそばから物が増えたり気を取られたり、あっち行ったりこっち行ったりしてなかなか終わりません。でもそれが作品中の転換期だったり、展開部だったり、問題解決のきっかけになったりするのです。あまり作業が進んでいないように見えて、実はぽんっと道が開けるための停滞だったと、終わってからその重要性に気づくんです。この西先生の小説はまさに回復の物語で、うつくしい世界で生きているうつくしい人を心から求めることへの抵抗感を取り払うことで、主人公は自分...この感想を読む
最初は重いが、終わりは軽やかな話
「満タンになった」事で、仕事を止めてしまった主人公の百合は、外出もできなくなり、そんな自分を認めたくなく、払拭するため、瀬戸内海の島に建つ、新しいリゾートホテルに4泊5日の旅をします。そこで、坂崎というバーデンダーと、マティアスという有閑ドイツ人青年と出会って…という話です。まず、思ったのは、最初が重い話なので、精神的に病んでいる時には、読むのは止めた方が良いんじゃないかと。最後は軽やかになって行きますが、それまで、自ら(百合)の病んでいる所や、その姉の病んでいる所を何度も読まなければならないので、気持ちが落ち込んでしまう可能性があるからです。三人が仲良くなり、いくつかの出来事を通して、百合の重かった気持ちが軽くなって行き、いつしか姉を認められるようになり、新しい一歩を踏み出すきっかけを得る事ができたのは、軽やかな終わり方で、とても良かったです。その後のマティアスと坂崎の会話や、百合と...この感想を読む