自分との向き合い方を教えてくれるきりこ
簡単に言うとぶすな女の子の半生の物語だけど…
題名だけ見て「なんの話だろう?」と想像もできないまま読み進めると、いきなり「きりこ」がどんなにぶすかという細かな描写が始まります。そこまで言っていいの?と気が引けるほどに。
そして色んな登場人物とともに、きりこの成長が描かれていくのですが、一体このぶすな女の子はどうなっていくんだろう?と気になって、ページをめくる手が止まりませんでした。
そのうち、きりこの成長だけでなく、関わった人達の人生もきちんと紹介されます。あの人どうなったんだろう?という消化不良が起きないのはおもしろい作り方だなぁと思いました。
口語が混ざったような、客観と主観がまざったような書き方もおもしろくて、読みやすい文章でした。
先が読めない設定と、よめたと思ったら先回りされるストーリー展開
きりこの設定はすごすぎて共感は難しいのですが、他の登場人物は「わかるわかる」というキャラばかりです。
なので、この本の世界観にすっかり入り込んでしまいます。
けれどしばらく読み進めると、この本はひたすらきりこの一生を描くのか??一体どうやって終わるんだ?と疑問が湧いてきます。
そんな時に急展開、きりこが予知夢を見ます。
そういえば伏線があった!さすが西加奈子!と驚きました。
物語も終盤にさしかかり、「ははーん、この小説がどう終わるかよめたぞ、猫が死んで終わるんだな」と想像できたとき、なんと本みずから猫が死ぬことを宣言するのです!
また西加奈子に一本とられた〜と嬉しくなるストーリー展開なのでした。
想像力をかきたてたら、こんな幸せな生き方ができるのかも
とんでもない世界観なので、実際にはこんなことナイナイ!と思うのだけど、想像を膨らませて猫の世界やきりこについて思いを馳せたら、読んだ人達ももっといい生き方が出来るかもしれません。きりこのように自分を理解し、認める、自分のできることをただ一生懸命やる、というのは意外に難しいものです。ちょうど私もそんなことで悩んでいた時でした。きりこのように特殊な外見、環境じゃなくても、きりこみたいに自分の生き方を見つけたいなぁと深く考えさせられました。
小説を読んだからといって、そう簡単に自分を受け止めることなんてできないけれど、きりこやきりこの周りの人達や猫が、幸せな生き方に辿り着いたのを見ると、前向きに正直に歩いていかなくちゃと思えました。
これからは必ず、猫にあったら「かわいい」じゃなくて「かしこい」と言おうと思います。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)