こうふく あかのの評価
こうふく あかのの感想
変わった旋毛を発見したような小さな感動。
カバーイラストがいくえみ綾先生。上記の理由で購入しました。そしてしばらく寝かせ、存在を忘れかけた頃に何か本を読みたくなって偶然手にした、という大した意気込みもなく欲求もないままページを開きました。本の内容もあらすじもわからず、真っさらのまま読みました。読み始めは言葉がつらつら綴られ、文章のつなぎ目が見えないほど巧妙で気持ちが良かったです。久しぶりの読書とあって私に言葉の流れの心地よさを思い出させてくれました。ゆっくりゆっくり水の中に体を浸し、足に藻が絡んでずぶずぶと気がつけば頭のてっぺんまで飲み込まれて、けれど私は水の中での息苦しさも感じず、体の自由が奪われた居心地の良さに抗えずにいました。西先生ならではの、ということは言えません。なぜなら強烈さに欠ける物語だからです。強力な武器をひとつも持っていない。持つことを必要としていない話だと思いました。生身でぶつかってきているという危うさに、...この感想を読む
最初は嫌な奴ですが。。。
2007年のある男(調査会社課長・既婚・妻あり)の物語から始まるのですが、この男が、鼻持ちならない男で、「いやな奴!!」と思いつつ読みました。また、2007年の話と交互に、2039年のプロレスラーの話が入ってきて、なぜこの話が必要なのか、最初は全然わからず、(私がプロレスがあまり好きではないので)読み飛ばしたくなる衝動を抑えて読み進めていくと、猪木の話が出てきて、ここでまず、「ああ繋がった」と安堵しました。また、男の同期の兎島という男が、自分に良く似てたので、親近感が湧いた。飲み屋に居る、2人の老女の会話も、面白かったです。最後に、その主人公の男が、とった行動が、2つの話を繋ぎ、大団円となります。話の中で、心持ちが変わっていく主人公の男…たぶん幸せな結末じゃないかと。良かったな、と思いました。