俺らが住んどる街、どの建物ひとつ取ったかて、どこぞの誰かぎ汗噴いて建てたもんやねんな。そう思うたら、なんやこの世界がやっと実体のある本物に見えてきてん
藤谷大輔
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小説レビュー数 3,368件
不思議な読後感を伴うこの小説、いろんな感想が混ざった不思議な読後感がある。そもそも、含んでいる要素が非常に多い。貧困、障害、社会悪、震災、邪悪な新興宗教とそれに傾倒してしまった若者、恋愛、小説を書くと言う行為、そして放り出された結末。それらの多くがこの1995年1月に集約するとも言えるし、個々の出来事がこの厄災の年にたまたまクロスした、ともいえる。この集約をピンポイントで上手くとらえた森絵都を、上手い!と褒めるべきなのか、盛り込み過ぎじゃないか? と 突っ込むべきなのか、この時点でも私はまだ考えている。礼司と結子のラストシーンは間違いなく秀逸だ。素直に泣ける。でも、という気持ちも残る。以下に細かい分析をしていこう。冒頭は世界観の説明がなく、ちょっと乗りにくいプロローグ部分でマラリアという言葉が出てくるので、最初は第二次世界大戦中あるいは戦争直後の混乱の時期を書いた小説かと思った。現在の...この感想を読む
藤谷大輔
主人公の友達である、金持ちの家に産まれた大輔。何不自由ない生活を送っていたように思われたが、主人公が暮らしていた釜(日雇い人が暮らす街)を見たその日から、世界が変わったと言う。釜での暮らしは大輔から見たら地獄のようだった。そして教祖と知り合い、教団に興味を持つ。そして大輔は、主人公に名言の言葉を放った後、出家をすることになる。
松ちゃん
仕事で、ある女性の小説を書くことになった主人公。しかし、物語を書き進めていくも、結末をどうしようかと悩む。そこで、主人公が以前暮らしていた釜ヶ崎の仲間である松ちゃんと会うことになり、お酒を交わす中、そこで松ちゃんがこの台詞を主人公に繰り返し言い続ける。