2つの読み方
この作品は二つの楽しみ方がある。一つは推理諸説。もう一つは奇術の入門書だ。推理小説としては緻密な伏線を張り巡らし、最終的にきちんと回収している。作者がマジシャンということもあり、まるで手品を見たかのような鮮やかなプロットとなっている。第Ⅱ部の作中の小説が事件解決の糸口になるという手法は、読者を観客と認識していると感じさせる。第Ⅱ部では奇術タネ明しを含めたショートショートとなっており、オチがしっかりしておりこれだけでも一つの作品として楽しめる。第Ⅲ部は世界国際奇術家会議と事件の解決編だ。探偵役の解説により、これまでの伏線が回収され、犯人が特定される。第Ⅱ部と第Ⅲ部に二つ目の楽しみ方がある。それはマジシャンとしての楽しみ方だ。この本を読む人は、奇術に興味のある人、それは見る方もだが、実際に演じている人も少なくはないだろ。私自身も奇術に興味があり、演じる中でこの本と巡り合った。第Ⅱ部のタネは...この感想を読む
4.54.5