項羽と劉邦のあらすじ・作品解説
『項羽と劉邦』は古代中国を舞台とした司馬遼太郎の歴史小説である。1977年から1979年にかけ「小説新潮」で掲載され、文庫本にして全3巻にわたる長編小説で、古代中国の歴史家・司馬遷の記した『史記』をベースにしつつも、作家独自の視点から新たな歴史解釈を加えることで豊かなストーリー性を実現した作品である。この題材は司馬遼太郎以外にもしばしば取り上げられ、国内では横山光輝による漫画や長與善郎による戯曲、また海外では中国や香港でドラマが放送されている。 秦の始皇帝の死後、中国大陸は小規模国家が乱立し群雄割拠の時代を迎えていた。その混乱のなか頭角を現したのが貴族出身で武勇に卓越した項羽と、平民出身の粗暴なならず者、劉邦であった。2人は互いに楚と漢の頭領として中国大陸の覇権を争い、幾度となく激しい戦いを繰り返す。作品の中では2人のみでなく彼らの下に集まる魅力的な豪傑たちも丹念に描かれ、ストーリーは周囲を巻き込みながら展開していく。
項羽と劉邦の評価
項羽と劉邦の感想
司馬遼太郎が初めて中国の歴史を素材にして、歴史を旋回させる権力がもつ不思議さ、玄妙さを描いた 「項羽と劉邦」
司馬遼太郎は、幕末や戦国という、いわば乱世に強い関心をもち、その時代の人間群像を独自の乱世史観によって描いてきたが、この「項羽と劉邦」は、作者が初めて中国の歴史を素材にして、紀元前二百年余の昔、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の勇将、項羽と天下をわけて争い、項羽を倒すに至るまでを描いた乱世物語なのです。中国大陸を統一し、絶大な権力を手中にした秦の始皇帝が、天下巡幸の途上、急死するあたりから筆を起こし、人民の大量虐殺や官営大土木工事への人民使役による始皇帝の権力示威、あるいは権力をめぐる側近の宦官、趙高の奸策などについて述べており、権力にまつわる記述は興趣満点で、私を惹きつけてやみません。司馬遼太郎ほど権力に対して、強い関心を示す作家はいないと思います。その広大な作品世界で、さまざまな観点から歴史を旋回させる権力がもつ不思議さ、玄妙さについて触れているのです。始皇帝が病死した時、趙高はその...この感想を読む
壮絶な項羽の最期
タイトルにふさわしく、項羽の壮絶ではあるけれども見事な最後で幕を下ろすこの作品。あまりにドラマチックで作者の創作がかなりの部分を占めるのではないかと思ったがそうではない。実は本書を手に取ったのが15の頃。高校の漢文の時間に「鴻門の会」を知ってから、その部分が含まれる書籍をあたってみたくなったのがきっかけだ。関連する作品では本宮ひろ志『赤龍王』も読んだ。司馬遼太郎作品と共通しているのはスタートとラストが同じであることだ。おそらく本宮氏は司馬作品を参考にしたのだと思う。(違っていたらすみません)本書が作者の創作が少ないと知ったのは原典の『史記』に触れてからである。描写、発言、すべてが『史記』の記述に則っていたので、改めて司馬氏(遷のほうじゃない)に畏敬の念を抱いた。司馬氏のオリジナリティはその解釈の仕方にあると思う。漢文体をなす『史記』では、日本語訳を施すにあたって注釈本を利用することが多...この感想を読む
昔から中国には闘いがありました。
広い中国で生まれも育ちも違う2人がくりひろげる2千年前の中国の歴史は、各地方の争いから始まり代表的な人物項羽がその地域の大表角となっていくその項羽の出世とは裏腹に浪人を繰り返す劉邦の性格まで、中国では徳を大事にするとか言うけど正に2人の代表者を中国人民が決めるという国が動く!この男たちを中心に中国が一つになる。そのリアルな体験を感じるにはこの本がわかりやすいのではないでしょうか、また自然などの景色も本を読んでいて浮かんでくるのはなんでしょう、懐かしい中国の昔話のような内容になっているのでしょうか、上巻はゆっくりと進行したおぼえがあります。一見の価値アリです。