モラトリアムを通して描かれる現代観
厭世的な現代観語り手である七草は(その境遇はともかく、少なくとも性格においては)現代日本ならどこにでもいる普通の高校生である。人生を諦めたように悲観することをデフォルトとし、それでも漠然とした淡い希望を胸に秘め、惰性に流されるまま日々を過ごしている。人間だれしも、とりわけ『陰キャ』に分類されるような人間であれば、彼の生き方はリアルで生々しいものに映る。例えば当たらないと分かっていながら宝くじを買ったり、叶わないと思いながら短冊に願いを書いたりするような、そんな感覚で七草は生きている。僅かな希望を捨てきれず、生温い絶望の海を惰性で泳いでいるような七草とは対極に、真辺由宇は真っ直ぐに望みの実現だけを信じて行動する。その性格はさながら勧善懲悪ハッピーエンドを信条とするスーパーヒーローのようで、けれどそれが成立するのは絵空事でしかないのだと、七草は思っている。絵空事のような希望を愚直に信じ、何...この感想を読む
5.05.0
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