項羽と劉邦の評価
項羽と劉邦についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が3件掲載中です。
各項目の評価分布
項羽と劉邦の感想
司馬遼太郎が初めて中国の歴史を素材にして、歴史を旋回させる権力がもつ不思議さ、玄妙さを描いた 「項羽と劉邦」
司馬遼太郎は、幕末や戦国という、いわば乱世に強い関心をもち、その時代の人間群像を独自の乱世史観によって描いてきたが、この「項羽と劉邦」は、作者が初めて中国の歴史を素材にして、紀元前二百年余の昔、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の勇将、項羽と天下をわけて争い、項羽を倒すに至るまでを描いた乱世物語なのです。中国大陸を統一し、絶大な権力を手中にした秦の始皇帝が、天下巡幸の途上、急死するあたりから筆を起こし、人民の大量虐殺や官営大土木工事への人民使役による始皇帝の権力示威、あるいは権力をめぐる側近の宦官、趙高の奸策などについて述べており、権力にまつわる記述は興趣満点で、私を惹きつけてやみません。司馬遼太郎ほど権力に対して、強い関心を示す作家はいないと思います。その広大な作品世界で、さまざまな観点から歴史を旋回させる権力がもつ不思議さ、玄妙さについて触れているのです。始皇帝が病死した時、趙高はその...この感想を読む