葉桜の季節に君を想うということのあらすじ・作品解説
葉桜の季節に君を想うということは、歌野晶午による長編小説で2003年3月に発売された。2007年5月には文庫化された。第57回日本推理作家協会賞や第4回本格ミステリ大賞を受賞し、このミステリーがすごい!2004年版第1位、本格ミステリベスト10の2004年版第1位に選ばれた。また週刊文春推理小説ベスト10、2003年度版第2位になるなどあらゆるミステリーの賞を受賞した。 元私立探偵、成瀬将虎は同じフィットネスクラブに通う久高愛子から相談を受ける。その相談の内容とはひき逃げ事故によって亡くなった身内が悪質な霊感商法を行っている業者によって保険金詐欺に巻き込まれていた証拠を掴んでほしいというものだった。同じ時期に将虎は地下鉄に飛び込み自殺をしようとしていた麻宮さくらという女性を助ける。そのお礼に何度かデートを重ねるうちにいい雰囲気になっていく。保険金詐欺事件と将虎の恋が同時進行で進んでいき、やがて2つの出来事が交錯していく。
葉桜の季節に君を想うということの評価
葉桜の季節に君を想うということの感想
判っていても見事な叙述
この作品は、叙述トリックの作品です。そう説明するしか術がないところが、叙述トリックを主題にした本の難しいところだと思う。ただ、この作品は、それをあらかじめ言われていても、その最後の衝撃の鮮やかさは少しも削がれることがないところが、叙述トリックの中でも素晴らしい作品だと思う。叙述トリックと知ってしまったからには、読み手はもうすでに罠にはまってしまっているのだが、ライトでフランクな文体と、軽いハードボイルド的なアクションで進むストーリーに、気がつけばどんどん読み進めてしまっているだろう。普通に話が面白い。この作品の最大の罠はそこで、最後の一撃はひっくり返せそうだったからやってみました、というお茶目なサービスにも思えてしまうところだ。ところがそんなことはなくて、作者の歌野晶午は最初から計算しており、読み返すと伏線があちらこちらに見つかってくる。騙されるため、騙されたあとは確認のため、ぜひ2回...この感想を読む
文体はライトですね。
文体はライトで読みやすいと思います。以前、他のレビューで「騙される」と書いてあり、興味が出て読みました。読み終えた直後の感想は「え~・・・」でした。アッと驚く結末という口コミを読んでいたので、それを期待して読んだのがいけなかったのでしょうか。登場人物の年齢が、いまいちピンとこなくて、うーん。すごい若者たちだと思っていたのに、お年寄りの方だったり。とにかくやっている事と年齢がちぐはぐ。作者の年齢が若いせいもあるのでしょうが、読んでいてちょっと気持ち悪くなりました。期待せず、なんの予備知識のない状態で読むには良いと思います。逆に期待すると裏切られます。歌野作品を読んだことのない方や、ちょっと読んでみようという方にはお薦めします。
叙述トリックの最高傑作
読む前からこれは騙される小説と聞いていて、騙されると分かっていても騙される、とまで言われていたのに、本当に騙された!こんな騙し方があるとは。読み始めた時は、主人公が俺様的な性格で、横柄だし、偉そうだし、なんとなく好きになれないなぁ、と思っていた。ところが、最後まで読んで種明かしされると、これが一気に好感に変わって、こんな考え方、こんな生き方できたらいいなぁ、とまで思わされてしまう。終盤、「自分の可能性を信じる人間だけが、その可能性を現実化できる資格を持つ」という言葉が出て来る。この言葉、忘れたくない。ミステリとして、主人公が追いかけている事件の謎はそんなに複雑なものではないのだけれど、それを補って余りある魅力的なキャラクターとトリックだった。
葉桜の季節に君を想うということの登場キャラクター
成瀬将虎
よみがな:なるせまさとら ニックネーム:トラ 性別:男性 国籍:日本 性格:見栄っ張り 特徴:2歳年下の妹と2人暮らし 物語上での目的:事件の真相究明 職業:自称なんでも屋 前職:探偵事務所 恋愛相手:麻宮さくら