峠うどん物語のあらすじ・作品解説
峠うどん物語は2011年8月に講談社から上下刊に分けて発売された、重松清による、死をテーマにした読者の心に届く物語である。 主人公のよっちゃんは祖父母が営むうどん屋「峠のうどん」を手伝う中学二年生。突然訪れた馴染みある人々の死をどう受け止めてよいのかもわからず、ひっしに汗だくになりながら峠のうどん屋で働き、自分とは何か、命とは何かを知りたいと願う。 そんなよっちゃんをとりまくおじいちゃん、おばあちゃん、おとうさん、お母さんと峠うどんの暖簾をくぐる人々の人間模様から、よっちゃんは死とは何か命とは何かについて知ることになる。 重松清の作品として2015年にTBSでドラマとして放送された流星ワゴンが挙げられるが、本作品も不器用ながらも懸命に生きる人々の姿と、ありふれた日常にある死についてを重松作品らしく、様々な角度から悲しくも尊く描かれている。 2011年には単行本として刊行され、2014年には電子書籍化となって販売されている。
峠うどん物語の評価
峠うどん物語の感想
グルメ無縁の人情うどん話。
私は正直、重松清は苦手な作家でした。量産される作品はどれも読みやすく、人の心に入り込み、つかみ、ひきつけるすべがこれでもか!となされ、そういう「重松節」みたいなものに、生理的な嫌悪感がありました。筆力は高く、間違いなく筆者は上手いのです。ですが、それゆえに、なのか、旨さが鼻につく…。そんな印象がなかなかぬぐえない。でもやっぱり上手いし、おもしろいな、と思わされてしまいました。市営斎場の目の前にたつうどん屋を手伝う孫と、祖父母と、父母の話。自然、話の中心は「生死」となっていきますが、そのとらえ方、提示の仕方がハンパなく豊富です。うどん屋の頑固ジジイの描写も、ほんとうに頑固で。食べ物の出てくる小説は、現在、あふれすぎるほどにありふれていますが、この小説のうどんは、「食べたくなる」ようなグルメ小説のものとは無縁です。うどんをすする人、つくる人、そんな人達が、話の中心にブレずに存在する小説でした。この感想を読む