ホテルカクタスの評価
ホテルカクタスの感想
最初人間じゃないのかと思いました。
不思議な感覚の物語です。登場人物達が、キュウリとか帽子とか数字の2とかで、最初人間じゃないのかと思いました。江國さんの作品には、胸にくるというか、ずっと心の中に残っている、不思議で素敵な作品があって、これもその一つです。少し切なくて、フーッと息抜きしたい時に読むには、良い一冊かなと思います。読書の秋、お供にお勧めです。作られた世界の中で、現実逃避を楽しめて最高です。素敵な世界です。古いアパートなのに、ホテルカクタスなのが面白いです。とにかく物語が魅力的で引き込まれてしまいます。一度読んでみて欲しい作品です。読まないとわからないです。
ナイーブなキャラクターが闊歩する、美麗なアパート。
古びた石造りのアパート「ホテル カクタス」に住む、「帽子」と「きゅうり」と「数字の2」の友情の交歓の物語。ほとんど寓話に近い物語である。まず登場人物の名前に抵抗感がある人は、もう読めないだろう。これは「そういう名前の人間」の話じゃなく、文字通り「それら」の登場する話だ。キャラクターたちの描写も、なので、ふるってる。彼らはお互いの特性を理解し、尊重しあい、時にはそれゆえに傷ついたりする。ナイーブなのだ。メルヘン、ファンタジーというほど本腰の入った奇想譚ではなく、感情を読むような物語だ。装画、挿絵をいろどる佐々木敦子の絵が、素晴らしい奥行きを与えている。江國香織には、こういう話をもっと書いてもらいたいものである。