鉄のライオンの評価
鉄のライオンの感想
80年代というものがわかる
1981年に大学進学のために上京してきた主人公。彼についての様々なエピソードが書かれた短編集。80年代の社会の動き・流行などが生き生きと描かれており、この時代に青春時代を送った人にとっては勿論のこと、知らない人でも楽しめる内容になっている。景気絶好調の時代。高揚感ある時代。この時代に生きていたかったと羨ましさでいっぱいになる。就職氷河期時代で必死になっていた自分の学生時代とは、時間の流れや空気がちがっていたのだなぁ。ただ、社会や景気は派手だけれど、そこに上手く乗り切れていない人も多かったのでは、と感じた。地味にコツコツ生きていくことを美とする感が染み付いている多くの日本人にとって、高揚感の中に哀愁が絶妙に入り込んでいた時代だったのかもしれない。