卒業のあらすじ・作品解説
卒業は、1986年に単行本が初刊行されたのち、1989年5月に講談社から文庫版が出版された小説である。作者は、名著『容疑者Xの献身』『手紙』の東野圭吾であり、彼の作品としては初期につくられた作品にあたる。この作品は、加賀恭一郎シリーズの第1作目であり、2015年時点で合計9作の作品において、加賀が登場している。 進路・就職・恋愛に忙しい大学4年生。同じ大学に通う仲の良い7人は、高校の時からの長い付き合いであった。大学生活も終わりに近づいたある日、その中の一人の女子学生が死体となって発見された。当初、彼女の死は自殺だとみられていた。しかし、いくつもの不自然な点があり、他殺も否定はできなかった。そこで、加賀たちは彼女の残した「てがかり」をもとに、事件の真相を探る。そして、彼らは真実を突き止めることができたのか… 茶道をテーマとし、そこに隠された殺人ゲームの真実とはなにかを探る、長編ミステリーの傑作である。
卒業の評価
卒業の感想
タイトルに込められた思い
新参者で有名な加賀恭一郎シリーズの第一弾です。主人公である加賀恭一郎が、大学4年生の時の話しで、学生仲間である女子学生の死がきっかけに、様々なことが起きてきます。彼女の死は自殺なのか、他殺なのか、様々な経緯がある中に、大切な仲間達が、仲が良かった仲間達が少しづつ歯車がずれていき、仲間の裏切りなどで事件へと展開していくところは読み応えがあります。また、中盤にある茶道の雪月花トリックは正直わかりづらく、何度も読み直しても理解しづらいのですが、学生である加賀恭一郎の真面目さと誠実さには派手さはありませんが、人間としての魅力が感じられ、一気に読める作品となっております。タイトルにあるように「卒業」というのは、学校生活ではなく、仲間への卒業でもあり、少し切なくなりますが、読み終わる頃には、タイトルに込められた思いが伝わる作品だと思います。