グルメ無縁の人情うどん話。
私は正直、重松清は苦手な作家でした。 量産される作品はどれも読みやすく、人の心に入り込み、つかみ、ひきつけるすべがこれでもか!となされ、そういう「重松節」みたいなものに、生理的な嫌悪感がありました。 筆力は高く、間違いなく筆者は上手いのです。 ですが、それゆえに、なのか、旨さが鼻につく…。 そんな印象がなかなかぬぐえない。 でもやっぱり上手いし、おもしろいな、と思わされてしまいました。 市営斎場の目の前にたつうどん屋を手伝う孫と、祖父母と、父母の話。 自然、話の中心は「生死」となっていきますが、そのとらえ方、提示の仕方がハンパなく豊富です。 うどん屋の頑固ジジイの描写も、ほんとうに頑固で。 食べ物の出てくる小説は、現在、あふれすぎるほどにありふれていますが、この小説のうどんは、「食べたくなる」ようなグルメ小説のものとは無縁です。 うどんをすする人、つくる人、そんな人達が、話の中心にブレずに存在する小説でした。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)