我慢とか辛抱とか感情を抑えるとか、そういうものがプツンとキレるんじゃない。自分と相手とのつながりがわずらわしくなって断ち切ってしまうことが、「キレる」なんじゃないか。
高橋栄司
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エイジは、1998年の重松清による小説作品。朝日新聞で連載され、その後朝日文庫、新潮文庫からも発行された。当時多発し始めていた少年犯罪に著者が着目し、書き上げた作品である。 東京近郊に住む中学2年生の少年・栄司は、成績優秀でバスケットボール部でも活躍していたが、成長痛により休部を余儀なくされ、どことなく身の入らない生活を送っていた。ある日、幾度となく犯行を繰り返していた通り魔が、とうとう逮捕された。犯人は中学生と聞き、興奮して友達たちと話していたが、その犯人はなんと、同じクラスの同級生だった…というストーリー。 作中では「マジ」など、今時の中学生らしい言葉遣いがリアルに再現されている。同級生の女の子へ抱いた恋心や、両親への思い、犯罪を犯してしまったクラスメイトへの複雑な気持ちなど、思春期の少年ならではの心象描写も細やかである。 翌年1999年の山本周五郎賞を受賞。2000年7月には、NHKでドラマ化もされた。
本当にリアルな中学生の日常あらすじに「少年のリアルな日常」とあるように、同じクラスの生徒が通り魔事件で逮捕されること以外は話の中に出てくる中学生活は本当に現実でも自身の中学時代に当てはめて思い出される状況やキャラクターばかりです。優等生のタモツ君のような存在はいつの時代もいますよね。達観している雰囲気を出し、エイジに「なんでB級のやつとつきあうの?」と言ってしまうあたりですね。あとはツカちゃんのような正義感強いけど表面は悪ぶっているガキ大将タイプですね。このキャラクターは現実世界で見かけるというよりはアニメで見かけますよね。エイジがそこまでダメなやつじゃないけどのび太君、ツカちゃんが正義感の強いガキ大将ジャイアン、その周りをちょろちょろしている中山君や海老沢君がスネ夫、タモツ君が性格の悪い出来杉君、相沢志穂が明るすぎるしずかちゃん、という風に考えていくとまるでドラえもんですね。ドラえも...この感想を読む
これを初めて読んだのは、ちょうど中学生の頃だった。当時、学校の図書館にはこの手の類の本がたくさん置かれていて、そのどれもが“イマドキ”の少年少女たちを分かったような語り口で書いていて、自分はそれらに辟易していた記憶がある。そんな中で、「エイジ」はわざとらしくない、本当の青春小説だった。自分たちの中から通り魔事件の犯人が出て、いろんなことを考え、悩み、葛藤する主人公エイジが良くて。まず最初の、ヒロイン相沢志穂が髪を切って来た日から彼女に恋に落ちるという展開が全然わざとらしくなくて、すとんと腑に落ちた。そのあとの展開も、「ああ、なんかこれ分かる」の連続だったように思う。時代と共に今の学校教育の実情はまた変わって来ているのではないかと思うけど、自分にとっては共感できるところの多い、とても面白い青春小説。
主人公が中学二年、そして街で起こる連続通り魔事件。ミステリっぽい雰囲気、そして中学二年という思春期の複雑な思い。本当に楽しめた作品でした。僕がこれを読んだのは当時中学二年。主人公と一緒でした。そして僕もバスケ部でオスグッドという・・・どこまで一緒なのかというぐらい一緒で、だからこそものすごく感情移入ができて楽しめたのだと思います。まず、会話がすごいです。どこまでもリアルでそのキャラが現実にいるような感じがします。「あぁ、こういうやつどこにでもいるんだな」と思いました。そして物語の軸になってくる連続通り魔事件。もう、本当に読み始めたら止まらなかったです。一押しです。
高橋栄司
この小説は、もし中学の同級生が連続通り魔事件の犯人だったら、という仮定の元に書かれています。主人公のエイジ(高橋栄司)はその犯人が、どうしてキレてしまったのか、どうして暴力をふるってしまったのか、ずっと考えていました。そんなとき、現実の人間関係がどんどん煩わしくなり、何もかもが嫌になって、「キレる」ということの真意を悟ったのです。