文学なのにスリリング - こころの感想

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こころ

4.644.64
文章力
4.50
ストーリー
4.30
キャラクター
4.40
設定
4.45
演出
4.35
感想数
14
読んだ人
48

文学なのにスリリング

4.54.5
文章力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
4.0

夏目漱石後年の名作です。 国語の教科書に載っていたり、学校で読まされる「文学作品」には退屈なものが少なくありません。 しかし本作はそうした「文学嫌い」の子がよんでもかなり引き込まれる構成になっています。 立派な人のように見えてどこか心に傷をひそめてそうな、謎めいたところのある「先生」。その先生に知り合った主人公が、先生の過去を知らされていく話です。 下宿先の娘との恋、それを先生の親友が絡む三角関係。恋と友情と自我。明治時代、急速に近代化を進める世相の中で、「個人のあり方」も揺らいでる時代。 そんな明治の精神を象徴するかのような乃木将軍の殉死が背景ともなります。 劇的な出来事は発生しません。また恋愛といっても激しいやりとりが出てくるわけでもありません。それにも関わらず、恋と友情のあいだで板挟みになる「先生」の悩みは現代人であるわれわれにもぐいぐいと迫ってきて、真実味があります。 時代を超えた普遍的なテーマがスリリングに、切実な形で作り挙げられており、決して退屈で面白みのない純文学ではありません。若い人にも一読して欲しい名作です。

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なにもかも手紙に書いているようで、そこにひそむ先生の暗い欲望

高校の教科書で読んだ思い出高校を卒業してから十年以上経って、夏目漱石の小説を読むようになり、その一冊をどこかで読んだ覚えがあるなと思いだしたのが、高校のころ教科書で目にした、この「こころ」。著者が夏目漱石ということも題名も忘れていたけど、内容はやけに鮮明に覚えていた。それにしても改めて全体を読んで、教科書に載っていたのが、極々一部で、しかもかなり後半だったことに驚かされたもので、でも、妙に納得もした。当時は、一体どういう話なんだと、今一内容を掴みかねたものだから。教科書には一応それまでの、あらすじも書いてあったけど、そもそも主人公と、謎の多い先生との出会い、そのつきあいがあっての、手紙の内容なのだから、そりゃあ、なんの話だともなる。 たしか、Kが下宿先のお嬢さんに気があるような様子が見られはじめてから、自殺するに至るまでの内容だったと思う。そのとき課題で、Kの自殺した理由を考えるものがあっ...この感想を読む

3.53.5
  • イヌダイヌダ
  • 208view
  • 3496文字
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こころの考察

西洋の思想と『こころ』夏目漱石のこころは主人公先生の心情が、他の登場人物の心情と食い違っているところを上手に表現した作品である。わたしは、Kが自殺したことに対して、「自分のせいだ」と感じているが、実際のKは、自殺の原因は、自分の信じてきた道と外れたことをしてしまった、つまり恋をすることで、自分の信じた宗教の道徳に反することだと感じてしまったせいなのである。主人公の葛藤、それにともなう登場人物の心情、行動の変化は、夏目漱石でなければ書けない力作だといえる。 しかも、この作品の後半は、先生が、「私」に手紙を書いた長い長い物語なのである。だから、実際Kやお嬢さんの本当の気持ちはわからないままなのである。先生が様々な人物の行動を観察して、相手はきっとこう考えているということを考察しているのである。 私は、この先生の性格が、悩みに影響していると考える。こうやって、自分自身の考えではなく、相手がこうだ...この感想を読む

5.05.0
  • くらうどくらうど
  • 605view
  • 2070文字

やはり万人に薦められる巨匠の名作。

私は一度こころを学生の時読みましたが、最近になり本屋でも目立つように積まれていたので思い出し、巨匠、晩年の名作と呼ばれるこの本を再び開くことを思いつきました。するとこれはどうにも色々な方向から読むことのできる小説でした。もちろん当時の私はきづくはずもなかったのですが。読む人で捉え方が変わる、といわれる小説は多々ありますが、ここまで物語が私によって変わっているとは思いませんでした。そして今回この本を読了するにあたって私に課された問は「人間性」についてでした。「平生はみんな善人であり、それがいざというまぎわに、急に悪人に変わる」作中、先生の台詞です。これが全てを物語っているように感じました。親戚に欺かれた先生は自分こそは立派な人であると思っていたが、ある時自分も裏切られてきた人達と変わらないと言う事を悟り、絶望し、自分不信に陥りそして、自殺してしまう。この先生の苦悩こそ今になっても変わらぬ...この感想を読む

5.05.0
  • kurorokuroro
  • 178view
  • 446文字

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