草枕のあらすじ・作品解説
「草枕」は、1906年に「新小説」に発表された、夏目漱石の初期の小説であり、1914年には、春陽堂から単行本が刊行されている。 「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」という有名な冒頭文で始まり、30才の洋画家である主人公が、熊本県の温泉を旅する様子が描かれた、夏目漱石の初期の傑作文学として名高い。 西洋化が進む日露戦争の当時において、日本の近代化や西洋文明に関する批評が含まれていたり、東洋の哲学や芸術論が含まれているなど、物語中心の単なる小説というよりも、当時の一級知識人である漱石の思想が垣間見れる作品である。また、胃病の話や探偵の話がよく出てくるなど、彼の持病や嗜好にまつわる私小説的な側面もよく出ている。 漱石は、「吾輩は猫である」を書き終えた後に本作の執筆に取り掛かっており、約2週間で書き上げたと言われている。
草枕の評価
草枕の感想
やはり言葉が綺麗でした
40代に入って読んでみると、その深みのある素晴らしさに夢中になれる。「三四郎」をはじめとする三部作が好きですが、「草枕」は趣が全く違って、難解でした。ですが、名作は一通り読んでおきたいです。綺麗な日本語を読むって良いですね!!文章が生きてる感じです。「神様のカルテ」を読んで、「草枕」を読みたくなりました。絵画のような作品は、読んでよかった。もうなんか最高としか言いようがないです。とにかく圧倒的に美しい。読み始めてしばらくすると「これが”坊っちゃん””吾輩は猫である”を書いた作家か」と驚かされました。まるでシュニッツラーやムージルの書く小説のようです。
ある種、芸術論かと。
「兎角に人の世は住みにくい」この言葉は今の現代にも当てはまると思った。特に、主人公のような大都会東京にいれば余計に思うはずだなと思う。そして、ごく自然に温泉宿へと癒しを求める青年。そこで出会った那美という女性に振り回され戸惑う青年。実は、この青年は漱石自身だったそうなんです。この温泉宿も実際に存在しており、今も現役営業されているようです。もちろんこの那美さんという女性も実在しており、実際の名前は「前田卓子」さんという方だったらしいです。この前田卓子さんもとい那美さんは物凄い変わり者で何回も青年を翻弄し続ける所が見どころだと思います。
芸術作品
草枕は、いろいろな意味で芸術作品です。まず、美しい文章、この草枕を読んでいると、小説が芸術なのだということを再認識できます。声に出して読んでみればそのリズムの良さ、日本語の美しさがわかるはずです。そして、言葉の通り、芸術作品がたくさん文中に出てきます。私は伊藤若冲や長澤芦雪、酒井抱一などが好きなので、作品内に彼らの作品を登場させた夏目漱石の審美眼というか、芸術的なセンスもかなりのものだったと思います。日本の江戸絵画だけでなく、海外芸術にも精通していた漱石、多方面への博識ぶりがただただすごいなと思います。高校生くらいのときには芸術にも興味がなく、非人情ってなんのこっちゃで、やたら難解に思えたものですが、今となっては漱石の異彩ぶりがわかる名著だと思います。