漱石日記のあらすじ・作品解説
漱石日記は、岩波書店より1990年4月16日に発行された、夏目漱石の日記の一部を収録した作品である。 この作品は、明治32、33年頃より漱石が亡くなった大正5年までの日記を収録した、平岡敏夫編集によるものである。800ページ超にものぼる日記や漱石が残したメモなどは1985年に発行された「漱石全集」第13巻で残されているが、この作品では、その一部である、イギリス・ロンドンへの留学日記、明治42年5月31日より8月14日までのことを綴った「それから」の日記、明治42年に満州や朝鮮を旅行したときのことを綴った満韓紀行日記、胃潰瘍の療養のために伊豆で過ごした際のことを綴った修善寺大患日記、明治の終焉日記、大正三年家庭日記、そして、大正5年最終日記と、7篇が収められている。 日記に残る漱石の言葉の数々は、夏目漱石という人間や、彼が作った他作品などの思いを読み解く鍵として注目されているほか、他作家の書籍の中で、彼の言葉が引用されるなど、後世にも影響を与え、評価を受けている作品である。
漱石日記の評価
漱石日記の感想
漱石の意気
やはり文豪らしい作品でした。読んでみたら想像以上に面白くて驚きました。とくに大正時代。おそらくノイローゼまっただ中にロンドンから、鏡子夫人にはまるで八つ当たりのように「入歯にしろ」と催促し、友人たちには「こっちにこれないか」とすがる。実直でいて過度にデリケートな人柄がしのばれるけれど、それも晩年に近づくと多くの弟子に慕われてやまない師の慈愛に満ちるようになる。至って大真面目な文面にのぞいてしまう意図せぬ可笑しさ、漱石という人間の愛らしさを感じ受けてなりませんでた。文士を押すんじゃありません、人間を押すんです。の名句に打たれるひとは今も多いはず。
生の漱石も面白い
この物語はかなり長い年月のモノが収められている。明治33年・・・私には全く想像のつかない。しかも海外へ留学したときの日記でもあり、帰国後の年号も変わった大正の晩年ぐらいまでのものが積み込まれている。だがこのの作品だけを読んだだけでは理解できないことがありすぎて。ちょっと読みにくい作品である。だって年表や交友関係など色々と抑えておかなければ理解するには難しすぎる。だがこの時代の人々。まぁインテリ系って言ったほうがいいかな。彼らの生活を見ることができて面白くはあるのだが・・・詳しくこの本を理解したいのならぜひ下調べをしておいたほうが良いです。今の日本とは全く異なる時代や文化。古くもあるが新しくもある。不思議な感じをあなたも感じてみてはいかかが?
夏目漱石の日常を綴った日記
夏目漱石が書いた日々の日記をまとめたもの。漱石はエッセイも執筆していますが、それとはまた違って、本当にその日にあったことをメモのように書き付けただけというタイプの日記。誰某が家に来たとか、修善寺での食事とは到底言えないような胃潰瘍患者専用病人食のメニューとか、そういった日々の生活が記されています。妻の鏡子に対する不満も綴られていますが、やはりその頃は精神状態がよくないのか、かなり荒んだ感じが読み取れます。個人的には明治天皇崩御について綴られた「明治の終焉日記」がとても興味深かったです。「こゞろ」でも明治天皇が亡くなる場面がありますが、さらに細かく漱石が綴っています。素顔の夏目漱石を知るにはとてもいい1冊です。