こころの感想一覧
夏目漱石による小説「こころ」についての感想が14件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
こころの考察
西洋の思想と『こころ』夏目漱石のこころは主人公先生の心情が、他の登場人物の心情と食い違っているところを上手に表現した作品である。わたしは、Kが自殺したことに対して、「自分のせいだ」と感じているが、実際のKは、自殺の原因は、自分の信じてきた道と外れたことをしてしまった、つまり恋をすることで、自分の信じた宗教の道徳に反することだと感じてしまったせいなのである。主人公の葛藤、それにともなう登場人物の心情、行動の変化は、夏目漱石でなければ書けない力作だといえる。 しかも、この作品の後半は、先生が、「私」に手紙を書いた長い長い物語なのである。だから、実際Kやお嬢さんの本当の気持ちはわからないままなのである。先生が様々な人物の行動を観察して、相手はきっとこう考えているということを考察しているのである。 私は、この先生の性格が、悩みに影響していると考える。こうやって、自分自身の考えではなく、相手がこうだ...この感想を読む
なにもかも手紙に書いているようで、そこにひそむ先生の暗い欲望
高校の教科書で読んだ思い出高校を卒業してから十年以上経って、夏目漱石の小説を読むようになり、その一冊をどこかで読んだ覚えがあるなと思いだしたのが、高校のころ教科書で目にした、この「こころ」。著者が夏目漱石ということも題名も忘れていたけど、内容はやけに鮮明に覚えていた。それにしても改めて全体を読んで、教科書に載っていたのが、極々一部で、しかもかなり後半だったことに驚かされたもので、でも、妙に納得もした。当時は、一体どういう話なんだと、今一内容を掴みかねたものだから。教科書には一応それまでの、あらすじも書いてあったけど、そもそも主人公と、謎の多い先生との出会い、そのつきあいがあっての、手紙の内容なのだから、そりゃあ、なんの話だともなる。 たしか、Kが下宿先のお嬢さんに気があるような様子が見られはじめてから、自殺するに至るまでの内容だったと思う。そのとき課題で、Kの自殺した理由を考えるものがあっ...この感想を読む
やはり万人に薦められる巨匠の名作。
私は一度こころを学生の時読みましたが、最近になり本屋でも目立つように積まれていたので思い出し、巨匠、晩年の名作と呼ばれるこの本を再び開くことを思いつきました。するとこれはどうにも色々な方向から読むことのできる小説でした。もちろん当時の私はきづくはずもなかったのですが。読む人で捉え方が変わる、といわれる小説は多々ありますが、ここまで物語が私によって変わっているとは思いませんでした。そして今回この本を読了するにあたって私に課された問は「人間性」についてでした。「平生はみんな善人であり、それがいざというまぎわに、急に悪人に変わる」作中、先生の台詞です。これが全てを物語っているように感じました。親戚に欺かれた先生は自分こそは立派な人であると思っていたが、ある時自分も裏切られてきた人達と変わらないと言う事を悟り、絶望し、自分不信に陥りそして、自殺してしまう。この先生の苦悩こそ今になっても変わらぬ...この感想を読む
自殺してしまう
みんな自殺してしまうんだなぁと思った記憶があります。Kと先生は下宿先のお嬢さんを取り合います。先生は、まさか、Kがお嬢さんを取られた所為で自殺するなんて思わなかったし、その所為で、ずっと負い目を背負い苦しむことになるとも思わなかったのでしょう。夏目漱石は、その心情をとてもうまく表現してると思います。罪の意識を持ちながら、生きることの辛さを表現した作品で、人間らしい人間を描いているようにも感じます。苦しみながら生きるのは確かに辛いと思います。高校の現国の授業で習った作品です。授業の最後に感想を書くように言われ、高校生の私は「お嬢さんは、いい迷惑だろうな」と書きました。
人間の深層心理をついた傑作
この物語は私の記憶が正しければ漱石が鬱の時に書いたものである。内容は所々暗澹としているが鋭い人間描写に心を打たれる。私個人では「吾輩は猫である」を呼んで余りに冗長で退屈してしまった経験があるが「こころ」は全くそれと違って透明感のある文体で心の闇を静謐さを以て書いているために何度も読み直してしまったほどである。褒めすぎかもしれないがこれが私の正直な感想である。 けれども漱石は「個人主義」と云う著作の中で哲学小説を書こうと試みたが頓挫したと述べている。最後に締めくくれば漱石は偉大ではあったが、そんなことを本人は微塵も思っていずにまっすぐに生きて生涯を文学に奉げたことには感嘆するしかない。
切ない名作
教科書にも掲載されている、夏目漱石の名作。中学や高校で読書感想文の課題として読んだというひとが多いだろう。こういう本は、思春期に読んでこそ、意味があるのではないかと思う。一番いいのは、思春期に読んで、大人になってからもう一度読むことだ。自分の考え方、捉え方の違いを把握することができる。上・中・下の三部作になっている。先生と私、両親と私、先生と遺書にわかれている。エゴイストな人間は嫌いだけど、そんな自分もエゴイストで嫌い、という先生がだいすき。恋は罪悪だというのも好きな言葉だ。嫉妬や裏切り、信頼、恋愛感情など、さまざまな感情が描かれている。
さすが名作
やはり有名な作品はいいと思いますね。一度は読んでおいた方が良いということで読んでみました。本書の背景は明治時代ですが、人としての普遍的な弱さや汚さなどが細かく描写されており、読んでいても古さを感じません。少し現代より文章こそ難しいものの、読んでいても昔のことのように感じないのです。現代人でもとても共感できます。どんどん読みたくなる文章で、先生と私、先生の妻、先生の妻の母、K(先生の友達)の数少ない登場人物でこれだけの心理描写を言葉巧みに表現できるのが凄いです。最後は、結末が分かっていながらも、涙がジワッとたまりました。人はこころを強く持たないといけないと感じました。きっと読むごとに色んな考えが出てくると思います。
文豪の名著
誰もが知っている文豪。彼の作品は今も昔も色褪せることがなく今も多くの人々に読まれています。世間や人間に対する洞察の深さに私はとても驚きました。でもこのような名作を作るのには多大なる悩みも伴ったと思われますし。苦しみぬいて考え抜いて作られたんだと思います。この作品は、いっけん恋愛をメインにしているように見えるが、読み解いていくと一度きりの人生。何に対してどう責任を取りどう罪をつぐない。どう誠実に生きるのかなどにあると思う。そして、この作品の一番の魅力は、身の回りのできごと、自分に起こることをいかに冷静に受け入れどう対処していくべきか、一見難しそうに思えるが論理的に分析されている点にあると思います。読み手により感じ方は様々だとは思うけどいろいろと考えさせられる。文豪と呼ぶにふさわしい洗練された作品だと思います。
先生の孤独
学生時代「猫」と「坊っちゃん」を最初の数ページずつ読んで以来、漱石は敬遠していた。「こゝろ」を読んでみようと思ったのは、「私は死ぬ前にたった一人で好いから、他を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか」この文がこころに引っ掛かったから、それだけだった。「先生と遺書」のKとお嬢さんと先生の三角関係よりも、「私」が感じる「先生」の孤独が見える「先生と私」が好きである。先生の自殺の切っ掛けとなった乃木将軍の殉死は一見唐突だが、当時の日本人にとって、明治天皇崩御と乃木さんの殉死はとても重大なことだった。
読みやす
自分は、こころを読んだのは教科書が初めてでした。しかし、長さの関係もあって、ほんの一部しか楽しむことができません。とても続きが気になったので(先生にネタバレされていましたが)図書館で借りて読んでみました。自分は主にエンターテインメント性の高いものばかりを読むのですが、これは十分に楽しめました。まぁ、鬱展開ではありますが、主人公たちの気持ちがありありと伝わってきて、感情移入が非常にしやすかったです。声に出して「どうすんだよこれ・・・」と言っちゃうほどでした。夏目漱石は本当にうまい文章を書く人だと思いました。読みやすく、そしてすんなりと内容が頭に入ってきます。おすすめの一冊です。
お嬢さん
人を疑っていしまうということ誰も信じられなくなるということ誰もがみんなそうではないと思うがしかし、少なくともこの作品が今現在も多くの方に読まれているということは先生と同じことを感じている人がいるといううことだろう。人に騙されていると感じている人間が逆に人をだましてしまった。そしてそのだました男は自分の友人。自分は何も咎められることなく友人は死んでしまった。こんなにも目覚めが悪くなるようなことはあるだろうか。普通に生きていてもそうそうはないだろう。だがこの作品に描かれてある一つ一つの細かい心理描写は普段の何げない生活で私たちが感じてしまうようなことが丁寧に書かれてありまさに人の心写した作品だと思う。
胸がつまされる
夏目漱石の言わずと知れた名作です。日本人はこの時期から鬱展開が好きなのか、と今読むと思ったりしますが、やはり漱石の心理描写と文章は感服するものがあります。三角関係と禁断の恋と友人の自殺。これ程激しい恋や恋愛事情が日本にもあったのだと発見させられる部分もあります。やっぱり、読み進めていってどんどんつらくなってきますが、どんどん興味をもって釘付けにされていきます。あの雰囲気は日本の文学の雰囲気の源流なのではと思います。明治以降の口語になってリアリズムが日本にも根付いた時代の作品です。こころはなんど読んでも深いなぁと、感じます。いろんな人生経験を積めば積むほど新しい味が出てきます。
夏目漱石のこころ。
昔国語の授業で習いました。日本で一番読まれている作品、といわれます。普通にストーリーとして読んでも面白いですが、哲学的にも深く考えさせられる作品です。何もしていない人に対し、「私」は「先生」と呼ぶ。みんなはそんな人間は駄目な人間だと言うが「私」にとっては「先生」であったのです。タイトルの「こころ」の通り、人間の本質にせまるような作品であると思います。この作品は新聞で連載されていたということを聞いたことがあります。この暗い雰囲気の作品を「こころ」ではなく「先生の遺書」という形で新聞で掲載されていたのは、それなりに社会に衝撃を与えたのではないかなと思います。
文学なのにスリリング
夏目漱石後年の名作です。国語の教科書に載っていたり、学校で読まされる「文学作品」には退屈なものが少なくありません。しかし本作はそうした「文学嫌い」の子がよんでもかなり引き込まれる構成になっています。立派な人のように見えてどこか心に傷をひそめてそうな、謎めいたところのある「先生」。その先生に知り合った主人公が、先生の過去を知らされていく話です。下宿先の娘との恋、それを先生の親友が絡む三角関係。恋と友情と自我。明治時代、急速に近代化を進める世相の中で、「個人のあり方」も揺らいでる時代。そんな明治の精神を象徴するかのような乃木将軍の殉死が背景ともなります。劇的な出来事は発生しません。また恋愛といっても激しいやりとりが出てくるわけでもありません。それにも関わらず、恋と友情のあいだで板挟みになる「先生」の悩みは現代人であるわれわれにもぐいぐいと迫ってきて、真実味があります。時代を超えた普遍的なテ...この感想を読む