女が女を維持していくのには大変なエネルギーを必要とするが、それを当然のごとくやってしまえる女と、それをするのに努力を必要とする女がいる
杉本つかさ
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ず初めにカバーの”期待の新鋭、待望の長編ミステリー”とのキャッチコピーが今となっては信じられない。 作家歴・作品数ともにベテランと呼んで差し支えない恩田陸さんが、まだ新鋭と呼ばれる時に出されたこの「木曜組曲」。 時子と異母兄弟の静子、時子の姪の直美、その異母兄弟のつかさ 静子の姪の絵里子 そして、血のつながりのないものの時子と一緒にくらしていたえい子。 5人の職業は、ライターに経営者に作家に編集者。 そして、女流作家の巨匠。 作中に出てくる登場人物は各々個性も気も強く、魅力的な働く5人の女性達。 この本を読んでいてまず初めに面白かったのが これだけ女性が集まる物語で、男絡みの話が出てこない。 ちょっとくらい 「つかさ元彼が絵里子の今の彼氏です」 とかあるのかと思っていたのにそれどころか。 登場する5人の女性達の、聡明で、巧妙で、逞しいこと。 作中、多少腹の探り合いはあるけれど、5人とも...この感想を読む
女5人の個性書き分けていらっしゃるのがすごいとまず読み終わってから思いました。そして何故だかリーガルハイを思い出しました。それはきっと「結局のところ真実は一体何だったの?」という疑問が残ったからだと思います。絵里子が主軸になり、裏で操るえい子、全体を把握する静子。この3人がまず腹黒いなあと。えい子が一番の親玉なんですが、表で助ける絵里子を抜擢するあたり、えい子の性格判断や立場の分析力はすごいと感心しました。長年見てきたからということもあるでしょうが、作品中では数日の関係だと絵里子は言っています。その数日で人の本質というか、芯の部分を見抜く力は辣腕編集者という肩書きに恥じない能力だと羨ましく思いました。女が5人も集まれば話は尽きないだろうこの時子を偲ぶ会は4年目にして雰囲気がガラッと変わる。そのタイミングを見計らう計画性や、人の心理を転がすまさに匠の技に私自身読んでいて翻弄され、早く結末を迎...この感想を読む
杉本つかさ
煙草を吸う静子を眺めながらつかさが思う一言。