木洩れ日に泳ぐ魚の評価
木洩れ日に泳ぐ魚の感想
導かれるようにストーリーを体験できる「木洩れ日に泳ぐ魚」の魅力
一風変わった恋愛小説この作品を読み終わってまず思ったのが、「ああ、これはやっぱり恋愛モノのお話だったんだ」ということでした。正直なところ、ヒロの最大関心事はいつだって自分自身……というようなところがありましたが、アキの感じていたつらさや苦しさというものは、間違いなく恋愛のそれだったと言えるでしょう。しかし同時に、読了済みの方ならばこの作品を「恋愛モノ」の一言では表現しきれないということを、実感していると思います。実はわたし、あらすじ紹介などに”男女の話”と書かれているのを見て、「恋愛モノかあ……」と読むのを後回しにしていたのです。けれど実際は、どうしてもっとはやく読まなかったんだ!と悔しく思ってしまうほど、様々なテイストが盛り込まれた作者の技の光る良作でした。では、いったいどんな技が効いているのでしょうか。絶妙なタイミングで繰り返される“引き”恩田陸作品の魅力のひとつに、「続きが気にな...この感想を読む
タイトルからは想像できない恩田ワールド
「木漏れ日に泳ぐ魚」からイメージするものこのタイトルからどういう内容の本をイメージするでしょうか?素直にイメージすればタイトルの意味の意味通りに「木漏れ日の間からもれる、美しく日の光が当たる水辺で泳ぐ魚達」です。それは、とても静かで穏やかな空間です。嵐の前触れなんて微塵も感じる事ができません…。「男女の別れ」「腹の探り合い」「殺人」となんとも後味の悪いスタートからはじまるのですタイトルとは裏腹に読み始めると同時に読感が、とても悪いのです。なんとも不穏な空気が漂いはじめ、これはただの男女の別れではないなと感じさせられます。引っ越しの前夜のがらんとした空間で普通別れる男女が、一晩過ごすなんてあり得ないでよね。男女の別れってお互いにもしくは一方が嫌になって別れるのでしょう。それなのにこの設定からとてつもなく嫌な空気を感じます。だからこそ冒頭から恩田先生の世界に引き込まれてしまうのです!読みな...この感想を読む