黒と茶の幻想のあらすじ・作品解説
「黒と茶の幻想」は恩田陸による長編小説である。『メフィスト』で2000年から2001年まで連載され、講談社より2001年に発行された。また、2006年に講談社文庫より文庫本が上下巻に分かれて発行された。 高校・大学時代の同級生である利枝子・彰彦・蒔生・節子の4人は、卒業から20年近くを経て再会したことをきっかけに、「Y島」への旅を計画する。彰彦の提案により、彼らは日常の「謎」を旅の中で解き明かすこととなり、過去にあった出来事を振り返りながら旅を進めることとなる。全部で4編からなっており、昔恋人同士であった利枝子と蒔生の別れの真実を主軸として、彰彦のトラウマである姉との関係、節子が抱えている家族の問題が主に語られており、合間に4人の学生時代に起きた小さな事件などが語られる、ミステリー小説である。 同じく講談社より出版されている、著者の短編小説集「三月は深き紅の淵を」の中で、同名の作品が作中小説として書かれている。
黒と茶の幻想の評価
黒と茶の幻想の感想
大人の修学旅行
恩田陸さんのいわゆる「三月シリーズ」の一つです。同じ講談社から出ている「三月は深き紅の淵を」という小説の中に出てくる小説のあらすじを、作品にしたものです。大学生時代の友人であった男女四人が、40代になって旅行へ行き、山歩きをしながら日常の「謎」を解いていくのがテーマです。その中で、恋人同士だった二人が別れることになった真実や、子供のころから抱えていたトラウマの謎を解明していくことになります。物語は4章で、それぞれの登場人物の視点から書かれており、前述の大きな謎2つが3章までで明かされます。そして最後の4章では、いずれの謎にも直接関わっていなかった人物の視点からつづられており、実は彼女の夫ががんで余命いくばくもないという、今抱えている大きな問題を読者に知らせることになります。3章までは過去の話、そして4章で「今」起きている話を描くというコントラストが特徴的です。夫婦同士でもない友人同士の...この感想を読む