人の記憶の不明確さの恐ろしいこと。
自由闊達本作品の最後の解説は小池真理子先生でした。小池真理子先生はこの作品を、自由闊達な筆さばき、と表現されています。読み終えてからこの言葉を聞くととても頷けるんですね。本当に自由で、勢いが衰えることを知らない。いいイメージでは子犬が元気に外で走っている風景、不気味さを取り入れれば釜を持った老婆が血眼になって獲物を探す様が思い浮かびます。私は圧倒的に後者がこの作品には合うと思うし、子犬が走る様子に不穏な雰囲気を感じとる人はまずいないでしょう。あえて付け足すなら、子犬が楽しそうに走っていたら、気がつくとぼろりと眼球が落ちて次に鼻が解けたように変形し、口は後頭部まで避けて、しかしそんなこともお構いなしにこちらに寄ってこようとする。メルヘンチックな和やかな空間から某ゾンビゲームのようなホラーに成り替わる光景に変わるでしょう。読み終えてもその残像が消えることがないんです。それは、仲間たちと一緒...この感想を読む
4.04.0
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