蛇行する川のほとりの評価
蛇行する川のほとりの感想
蛇行しすぎて氾濫した川のほとりで過ごした夏。
知的でお洒落で、気取らない文章女性の持つ女性に対しての憧れと崇拝と、反動で重く腹に落ちてくる現実と嫉妬と。登場人物たちはその嫉妬に目隠しされることなくきちんと自分の気持ちを呑み込んで、憂鬱になるけれどその激情を爆発させることはない。小さな頃のおぼろげな記憶で、各々が形成した思い出を胸に高校生という年齢に達した登場人物たちは再会を果たすのですが、キラキラしたままの青春では済まされない、美しいものの裏側をまざまざと見せつけられる夏を過ごします。女の子もいれば、男の子も途中から参加する。普通なら日常ではない密度の濃い毎日に体力が許す限り時間の隅から隅までを浮き足立った弾む気持ちで過ごすのだろうけれど、恩田陸先生はそれをしない。普通の青春恋愛小説にはしない。ほんの少しの鋭さがかえってとても目立つ、警戒心を生み出す、本当にささやかに徐々に鋭さを増していく話の展開に私は隙間時間が出来れば1分でも作品...この感想を読む
上質な少女漫画を読んでいるようなぜいたくさ
「蛇行する川のほとり」は、演劇部に所属する3人の女子高生が夏休みに経験するできごとを描いた物語です。恩田陸の作品には高校生がよく登場しますが、その中でもとくに美しく耽美的に描かれた作品だと思います。女の子の目から見ても美しく憧れの2人の先輩と、自然豊かな別荘で演劇のための絵を描くというシチュエーション、一昔前の少女漫画に出てきそうです。先輩たちがどんな風に美しいのか、別荘の周辺の自然がどんなに豊かなのか、そして女の子だけで過ごす合宿でちょっとした料理を作ったり夜更かししておしゃべりするのがどんなに楽しいか、そんなところまで細かに表現されており、頭の中に映像が浮かんでくる作品です。新潮社の「六番目の小夜子」や「夜のピクニック」では、男子と女子が仲良くわちゃわちゃとしている様子が書かれており、非常に現代的な作品です。しかし「蛇行する川のほとり」では、何となく男の子の「ぶつかってきそうな感じ...この感想を読む