パーク・ライフの評価
パーク・ライフの感想
吉田修一らしい若者の姿が風景とともに楽しめる作品
吉田修一の風景描写が生きている作品吉田修一の作品の特徴は、なんといってもその風景描写のうまさだと思う。登場人物の周りにある木や通り過ぎる人々、食べ物やふいに地面に落ちているハンカチなど、カメラがパンするようにいろいろな景色をなめて移り変わっていく様子が実にうまく書かれている。登場人物が立っている位置は変わらないのに、その周りの風景が緻密に書かれている様はとても映像的で、吉田修一の作品の中で好きなところだ。この「パーク・ライフ」もそのような風景描写が印象的な作品だ。主人公である男性の周りで起こる色々な出来事は詳しく書かれているけれど、彼自身の心理や思っていることはさほと深く切り込まれることはない。彼の発するセリフでその心情を推し量るくらいだ。この風景描写ほど心理描写を重きにおいていない、というよりは意識的にそれを避けているようにさえ感じられるこの手法は、吉田修一の作品でよく感じられること...この感想を読む
読後に何も残らない心地良さ。
都会(東京)のある程度仕事にもこなれた感じで働いている社会人のごくあたりまえの日常生活がサラッと描かれています。ストーリーは単調で、劇的な展開も感動など何も起こりません。しかし、主人公がお昼に公園で過ごしたり、たまに合う名前も知らないスタバ女とふれ合ったりする絶妙な空気感がとても心地良かったです。読んでいると、自分も一緒に東京生活に馴染んでいる気分になれました。読後は特に何も残りませんが、私はそのくらい力が抜けたゆるい感じが好みです。「芥川賞作品」ということには驚きを感じますが、たまにはこういう小難しくない、単調な作品が選ばれるのも悪くないのかもしれませんね。
芥川賞受賞作
芥川賞受賞作って、起承転結がハッキリしておらず、日常が淡々と綴られたものが多い気がする(偏見か?)。「パーク・ライフ」もしかり。特に大きな出来事があるわけでもない。ただ、よく行く公園である女性と出会って、、だからと言って何か起こるわけではない。その女性と恋愛関係に発展するとかそういうこともなく、そのまま終わる。でも、頭の中にしっかり残る。ストーリーのあらすじを説明しようとすると困ってしまうのだが、印象に残る要素がとても多いのだ。主人公の生活が豊か?とでも言おうか。読んだあと、生活の中でふと思い出されて、あれはどういう意味だったんだろう?などと考えてしまうような、そんな雰囲気を持った小説。理由は説明できないけど大好きな物語。