アヒルと鴨のコインロッカーの評価
アヒルと鴨のコインロッカーの感想
演出家伊坂幸太郎
この作品は私が読んだ伊坂幸太郎作品の2作目となります。初めて読んだ作品は『陽気なギャングが地球を廻す』だったのですが、演出などが非常に私の好みに合っており、他の作品も是非読みたいと思って手に取ったものが『アヒルと鴨のコインロッカー』でした。この作品の特徴として、主人公が物語に途中参加する、という事が挙げられると思います。引っ越した先の隣人と、ペットショップの女性店員、そして今はもう亡くなってしまったもう1人の女性店員。現在と過去を軸に、主にこの3人の物語が語られます。そこに主人公が途中参加し、読者と共に客観的にその物語を見届ける。つまり、主人公は主人公でありながらその物語上では脇役に過ぎないのです。また、伊坂幸太郎さんの物語の面白さは掃除機のような伏線回収だと思います。色々な所に伏線を張り、それを最後にまるで答え合わせをするかのように一気に回収する。読んでいてとてもスッキリするものがあり...この感想を読む
切ない、切な過ぎる物語
何度読んでも、何度思い返してもあまりの切なさに鳥肌。物語は二年前の出来事と並行して描かれていく。現在の部分にあたる主人公は、”途中参加”させられただけ。二年前に出て来る登場人物たちが本来の主人公。でもそこにひとつの壮大な仕掛けがあって。それが明かされた時の、なんとも言えない切ない気持ちがすごい。こんな物語設定や構成を思い付くのは伊坂さんぐらいだろう。小説の新しい可能性を提示されたような。いつものごとくキャラ一人ひとりが魅力的なのだが、河崎のことを考えると胸が締め付けられる。これも映画化されているのだが、やはり設定の奇抜さ、描写の丁寧さ、雰囲気作りで言えば原作が遙かに上をいっていると思う。
オチに度肝を抜かれた。
「2年前」と「現在」が交差して描かれています。過去はモノクロ、現在はカラーという具合に自然にイメージしながら読んでいました。だんだんと過去と現在が繋がっていくので、パズルみたいに計算されているな、と感心してしまいました。動物虐待、復讐、エイズなど。どことなく薄暗い内容でも含まれていましたが、やや浮世離れした登場人物・会話などが軽快なので、そんなに深刻になることもありませんでした。すでに映画化された登場人物(瑛太)を具体的にイメージして読んでいたので、最後のオチ部分には「えーーーっ!?」っと、度肝を抜かれ、頭が混乱してしまいました。これって、どうやって映像化してんだろう?っと、映画を見たくなりました。