ラッシュライフの評価
ラッシュライフの感想
芳醇な白い球体のパズル。
普通の人々の本性ラッシュという言葉を聞くと通勤ラッシュや帰省ラッシュなど、忙しない現代の普通の無個性な人達の生活が連想されないだろうか。しかしこの「ラッシュライフ」と名付けられた小説の中には所謂「普通」の人など存在しない。泥棒で生活している男、神様を妄信する自死遺族の青年、不倫相手の妻を殺そうとする女性カウンセラー、無職になり自暴自棄になって泥棒をしようとする中年男、などなど。あらすじだけ読むと何でもありの派手なミステリー小説のように思える。しかし実際に読んでみるとこの小説のテーマは現代の人間の思う普通とは何か?幸せとは何か?というひたすら根源的で地味なテーマであると気付く。この小説の中の登場人物は読者から見るとかなり異質であると感じられるが、当の登場人物達はまったく自分を普通であると認識していると感じられるセリフの言い回しが多い。それ故いっそう読者達にとって登場人物達の異質さが感じら...この感想を読む
緻密なパズルのようなヒューマンドラマ
加筆修正された文庫版よりこちらのほうが好き。初めて読んだ時の衝撃は凄まじかった。こんな小説を書ける人が世の中にいるとは、という感じ。群像劇なんだけど、すべてが綺麗につながっている。読み進めるうちに、どんどんパズルのピースがはまっていくような感覚。本当に面白いし、気持ち良く騙されるというか。伊坂幸太郎作品は、勧善懲悪のようなところがあるなぁ、とよく思うのだけど、この作品も然り。登場人物によってはどうしても暗い、あまり救いのない結末にたどり着いてしまう部分もあるとはいえ、さわやかな読後感素晴らしい。きっと、表紙のエッシャーの絵を愛おしいような気持ちで眺めてしまうと思う。そしてやはり黒澤さんが、ひどく格好良いんだなぁ。(すべてはここから始まった、と。)あらゆる人にオススメしたい小説。
混ざり合うストーリー
個人的には文句のつけどころがないぐらいすばらしい作品だと思う。いくつものストーリーがばらばらに進行していくのでなれるまでは読みにくいかもしれない。ストーリーとしては、何人もの人生が交じり合う。私は泥棒の黒澤が大好きだ。物語の収束に向かって加速、どんどんピースがはまり、一枚の絵になっていくような感じ。のめりこむと抜け出せないような作品だ。人生とはどういうことだろう、特に、豊潤な人生とはどういうことだろう、と考えさせられる。最初、面白くないと感じでも、中盤まで読みすすめてみてほしい。そこまで読めば、きっと、続きが気になって仕方なくなるだろう。