人生は要約できねえんだよ
井坂好太郎
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モダンタイムスは、週刊漫画雑誌「モーニング」で連載されたものに加筆修正し、2008年10月に講談社から刊行された伊坂幸太郎の長編小説である。その特殊な環境(文芸誌ではなくマンガ雑誌での連載)から、単行本も、小説のみのものと、花沢健吾による挿絵付きのものと2種類の単行本が出版された。 「実家に忘れてきました。何を?勇気を。」この1文から本書は始まる。その数十年後、恐妻家のシステムエンジニアである渡辺拓海が見知らぬ男から「勇気はあるか?」と聞かれたところから物語は展開していく。妻との関係性、その過去や謎、また、ある語句を組み合わせて検索した人に共通して襲いかかる恐怖など、シリアスなテーマでありながら、軽妙な会話とテンポの良い展開でコミカルさも感じさせる作品となっている。 伊坂幸太郎の前作「魔王」の続編ともされており、同じ登場人物も出てくるが、物語としてのつながりはほとんどなく、今作だけをいきなり読んでも楽しめるようになっている。
「魔王」から続く数十年後の世界、前半はかなりのスローペースですが、だんだんと世界にひきこまれていきました。ストーリーはインターネットの“検索”から恐怖が始まります。システムエンジニアで恐妻家の渡辺拓海が、失踪した同僚の残していた「サイトシステムの修復作業」そこに秘められた謎に迫ったときに、身の回りに次々と事件が起こりだします。あるキーワードを検索してしまうと、検索をしたものに不幸が起きる。それだけだとなんだかホラーっぽい感じもしますが、あちらこちらに伏線がはりめぐされていてさすがは伊坂氏です。下巻に続きます。著者?井坂好太郎なる作家も登場し、重要な鍵となる人物のようでとても楽しみです。
魔王の続編がでた、と言うことで手に取った一作ある。時代設定は近未来。魔王でのキャラクターがよぼよぼのおじいちゃんになっているころである。(安藤潤也夫妻のことだ)そして掲げられたテーマはやはりあまりにも大きなもので現代に通ずるいわゆるネット社会、権力、政治といったものでそれらに立ち向かう主人公の目線で物語りは進んでいきます。魔王では一人の影響力のとてつもなく大きい政治家が「魔王」としてとりあげられたがモダンタイムス、現代となってはそれが物語の前身ともなる「検索システム」に移し変えられたものなのかとおもいます。テーマは大きくも物語の切り口はやはり伊坂氏らしく鮮やかで美しかったです。魔王を読んだ方はぜひ読んでみてください、読んでない方も魔王を読んでから読んでみてください笑一つのつながった物語として魔王で残ったもやもやを晴らしてくれるラストになっています。
伊坂幸太郎作品にハズレ無しということで順に読み進めていて、初めて「んん?」となった作品かもしれない。一応世界観としては「魔王」の続編にあたる。”検索から、監視が始まる”という設定はさすがというか、情報社会にくわしい伊坂幸太郎さんならではで、巧いなと思った。これは単なる好みの問題ではないかと思うのだけれど、どうしても奥さんが好きになれず。どうしてもわざとらしいと感じてしまう。そして「魔王」であんな終わり方をしたのに、潤也くん結局それかよ!ってなってしまったのは自分だけだろうか? 今作もそれと同様のメッセージを伝えているように感じられるし、それがあまりに哀しいので減点。
井坂好太郎
人生には日々の積み重ねでできている。人生の大事な部分を切り取れば、就職結婚出産などが残る。だが大事なのは要約して消えた日々の出来事であり、 それこそが人生である