チルドレンのあらすじ・作品解説
チルドレンは2004年5月に講談社から刊行された伊坂幸太郎の短編集で、第56回日本推理作家協会賞短編部門候補作ともなった作品である。5つの短編からなり、各編には共通する人物が登場し彼らの日常が語られていく中で、特に全編にわたって登場する陣内のキャラクターが印象的に描かれている。独自の正義感を持ち、常に周りを振り回すがどこか憎めないキャラクターの陣内、その友人の鴨居、生まれながらに全盲でありながら、冷静な判断力と推理力を持っている永瀬。その出会いや、陣内の今や過去・・。それぞれの短編の語り手や時代の設定はその都度変わっていくが、何気ない日常に起こった5つの物語が、作者自ら「短編集のふりをした長編小説」と称したように1つにつながり、結果この作品は、心温まる連作短編集となっている。軽妙な会話と、ミステリー仕立ての謎かけなど、伊坂作品の魅力満載である。 2006年5月に大森南朋・坂口憲二・小西真奈美ら出演でドラマ化され、同じ年の11月に劇場公開された。
チルドレンの評価
チルドレンの感想
素直な気持ちが、当たり前の奇跡を起こす
爽快が持ち味の伊坂作品のなかでは、異色作伊坂幸太郎は不思議な作家だ。ごくふつうの、日常を描いた小説のなかにミステリーを落とし込んでくる。しかも登場人物に罠を仕掛ける訳ではなく、読者へ直接罠を仕掛けてくるのだから厄介で小にくたらしい。いたずらのように悪質で可愛らしく、難解で深い。それでも、仕掛けられた方は「やられた!」と爽快な気分になるから不思議なのだ。まるで一休さんにでも騙された気分。もしくは、足払いにかかって思いっきり床にたたきつけられたら、仰ぎ見上げたそこに天井はなく、青空が広がっていた、そんな気分。だから筆者は伊坂作品のことを、青空ミステリーだとか一休ミステリーだとか勝手に呼んでいる。しかし、『チルドレン』はじゃっかん、他の作品とは趣が異なる、と筆者は思っている。と、いうのも、『チルドレン』は短編連作でありながら章をまたいだミステリーがないからだ。『砂漠』のような章をまたいだ仕掛...この感想を読む
短編ながら読み応えのある一冊。
破天荒な男、陣内君を中心に展開する5つの短編集。短編集でも時系列が交互に登場して、それぞれの話が少しずつ繋がっていてそこがまたおもしろく、長編のような味わいになっています。想像を超える無茶苦茶加減、破天荒男の陣内君。最初は理解出来ないと思っていたけれど、最後には、にんまりかっこいいって思ってしまいました。陣内君の他に登場人物のキャラが濃くさらに話を面白く引き立てていて、。本作はトリックよりもキャラの印象が強かったです。家裁の調査官という設定にもとても興味がわきました。肯定感に溢れている世界に浸るのもたまにはとってもいい感じです。大人がかっこよければ子供はぐれない・・なるほどです。
子供の心のままに
五つの短編からなる一つの長編小説。その物語の中で不思議な存在感を放つ男「陣内」彼こそがが物語の主人公であり「チルドレン」なのである。読み進めていくうちに彼の傍若無人な行動、破天荒な言動、それらに最初は登場人物と共に読者も彼に振り回されることになる。しかしいつの間にか彼に魅力を見出さずにはいられなくなるのである。伊坂氏のキャラクターの中で彼が一番好きかもしれません笑 そう思わせる程今作では伊坂氏らしさを存分に発揮されたキャラクタをもつ人物だと思います。彼の台詞はいつもめちゃくちゃで、でもどこか考えさせられるようなところが必ずあって…こんな人が友達にいたらやっぱり振り回されるんだろうなと思うけれどいたらきっと人生を変えてくれるようなやつ。それが「チルドレン」である陣内なのです!中年になっても褪せない子供らしさを持つ彼はあなたに力を与えてくれるでしょう。