フィッシュストーリーのあらすじ・作品解説
フィッシュストーリーは2007年1月に新潮社から刊行された伊坂幸太郎の短編小説集の中に収録された表題作である。短編でありながら、その舞台は20数年前、いま、30数年前、そして10年後・・と様々に移り変わる。合コンの送り迎えをさせられた帰りに女性の悲鳴を聞いてしまう気弱な大学生、彼が車で聞いていたのは売れないバンドの最後のレコードとなった曰くつきの曲、時代は変わり、修学旅行の途中で眠りこけて船に取り残されてしまったためにシージャックに巻き込まれた女子高校生、そして更に時代は変わって巨大な彗星の衝突により地球が滅亡すると言う日に、たった1軒営業を続けるレコード店・・。これらが一つにつながっていく伊坂幸太郎の真骨頂とも言うべきストーリーの展開を見せ、時代を超えてつながる人々の思いが描かれる。 2009年には伊藤淳史、高良健吾、多部未華子、濱田岳、森山未来など、そうそうたるメンバー出演の映画が公開され、劇中化などの音楽プロデュースは斉藤和義が担当している。
フィッシュストーリーの評価
フィッシュストーリーの感想
映画の原作
これまで単行本に収録されていなかった短編のバラバラな寄せ集めなので統一感もあったものではないというか、よくこれで一冊の本として出版したなぁとまで思ってしまうほど。そしてこれに収録されているうちの二つが、今現在映画になっていて、特に「フィッシュ・ストーリー」は秀逸だと思う。こちらの原作のほうは、映画と違って、小さくまとまっているような印象。「ラッシュ・ライフ」に出て来た老夫婦が再び登場したり、それを除けても、伊坂作品のパズル的要素が十分に活かされていると思った。プロデューサーの谷が実は彼らのことを気に入っていた、という点などは細やかだなぁ、と。あとの3つの話はあまり好きになれなかった。
伊坂ワールド全開のさらっと読める作品たち
伊坂ワールド全開の4作品が楽しめます。伊坂作品の入門編としておすすめ。表題のフィッシュストーリーは売れないロックバンドの物語です。現在、過去、未来の関係性がおもしろい展開です。人の生きる意味とは何だろうか。誰かの役に立つことはあるのだろうか…。偶然が紡ぎ出す奇跡といった感じでしょうか。バンドメンバーの一発録りのシーンが印象的です。短編の中の違う作品でも共通した人物が出てきて面白い。いずれも読みやすく、さらっと本を読みたい気分の時にぴったりです。伏線とその回収の仕方が秀逸だなと感じます。中でも、夜の動物園で展開される物語である「動物のエンジン」が切ない物語で好きでした。