あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?
苗場
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この作品は、伊坂幸太郎さんの作品の中で一番好きな作品だ。この作品は、何個かにストーリーが分かれているが、実は同じ時を過ごしていたり、誰かと誰かが知り合いだったりと、伊坂幸太郎さんらしい構成を取っている。この本全体の設定としては、もう少しで隕石が地球に飛んできて、地球が滅亡してしまうのを知らされた人類が、混乱している中での生活を描いている。登場人物は皆、仙台の「ヒルズタウン」に住んでいる。この中で私が一番好きなストーリーは、「太陽のシール」だ。登場人物はごく普通の夫婦だが、なんとこんな時期に妻に妊娠疑惑が。最初は、しっかりして冷静な奥さんに比べて、旦那さんはなんて優柔不断で頼りないんだと思った。私も妊娠・出産経験があるが、できちゃった結婚なため、産むかどうか迷った経験があるので、このふうふの気持ちがよくわかった。産んだとしてもこの子が小さい頃に地球が滅亡してしまうが、産まないという選択も...この感想を読む
あと三年ほどで地球に小惑星がぶつかり、世界が終わるという、なんとも突飛な設定のもとに書かれた連作短編集。それだけ聞くとトンデモ設定だけど、実際にはそういう世界観がとてもリアルに丁寧に描かれている。ニュースで発表があったのは五年前。そのすぐあとには暴動や犯罪が頻繁に起きて、現在は小康状態。その日が近づいたらまた人々は何かしでかすんじゃないか、という危機感があって。でも生きている限りはその日その日をきちんと生きようというような、人それぞれのドラマや決意がある。実際に終わるところまでは描かれておらず、終わりから三年前の状態のままラストを迎えるのだけれど、いろんなことを考えさせる本だった。
苗場
俳優から何気なく、明日死ぬとしたらどうする?と聞かれ、草場は、変わらない、と答える。すると俳優は馬鹿にする。そして、草場が俳優に発した言葉がこの名言。いつ死ぬかわからないから、今自分に出来ることを一生懸命にやる、その姿勢を感じる。長生きするつもりで、この1年なんて、と堕落に過ごすのではなく、一生懸命に生きる草場に感銘を受ける。